この土地に、越して来たばかりの頃は
家の周りは、ほぼ更地に草が生い茂った
土地ばかりだった。
昔の、ニュータウン。
ご近所さんも、子育てを随分と前に
終えたような年配の世帯が
圧倒的に多かったが。
この、2、3年で…どういうわけか
あっという間に家が建ち並び
若い世帯が、一気に増えたのだ。
まだ、小さかった我が子が
走り回って虫を追いかけた草原は
もうなくなってしまった。
濃い夕焼けが、美しかった景色も
家の向こう側に消えてしまった。
何よりも、肩身がギュッと狭くなったような
席を譲り合って座る息苦しさのような
そんな、心地すら感じ始めている。
雪が積もり、まともなスーパーも無い
この土地は決して住みやすいとは
言い難いのだが…
街の暮らしを、知らない私からしたら
越して来た人たちにとって
この土地は
「ここではないどこか」だったのだろうか。
【お題:ここではないどこか】
3日後にも、珍しく会う約束を
していた。
だから、軽い感じで
「またな!」っと、互いに別れた。
約束の時間。約束の場所。
アイツは、来なかった。
同級生、腐れ縁、親友…
呼び名は幾つもあるかもしれないが
アイツは、アイツでしかなかった。
後に、少し痩せたアイツの母親から
「あの子から…」と、小さな包みを
受け取った。
2人が好きな、ミュージシャンの
アルバムに、夏はフェス参加!!
日付とハッピーバースデー!の
見慣れた文字だ。
約束をした日は、俺の誕生日だったから。
アイツは…
毎年、命日には
あのアルバムを流しながら
アイツに会いに行く。
今年は、結婚の報告もしなくちゃなと
ふと微笑む。
梅雨の晴れ間、真夏のような青空。
今でもアイツは、唯一無二の存在だ。
【お題:君と最後に会った日】
誰しもが、内側に
ひっそりと咲かせている
「繊細な花」
それを、心と呼ぶ人もいれば
思い出と言う人も、いるだろう。
繊細だから、弱いわけでは無い。
か細く見えても
想像を遥かに超えて、根はしっかりと
しているのだから。
その花は、枯れない。
誰にも奪われない。
そう思えば、自分ももう少し
強くいれるような…気持ちになるのだ。
【お題:繊細な花】
1年後
子どもたちは、もっと成長しているだろう
どんな自分で、在りたいのか。
母親という存在を、いつか
「人」として見るタイミングが
やってくる事を、私は知っている。
だからこそ
本当に、大切な事は
口酸っぱく伝え続けよう。
けど、時には空も飛べそうな
突拍子もない夢を語ろう。
そうして、子どもたちの
安心出来る場所でいられたならと…
欲張りな目標を企てている。
【お題:1年後】
子供の頃は、知らなかった
蛍の話し。
毎年、この時期になると
蛍を見に私の住む地域は夜の
車の往来が、物凄く多くなる。
蛍の数は、幼少期の記憶から辿っても
少なくなったとしか言いようがない。
それでも、この時期になると
私は蛍を見にそっと出かける。
成虫になるまで、およそ1年
繁殖に不要な口は退化し
僅かな水分とそれまでに蓄えた養分で
2週間光り舞う蛍たち。
そういう知識は子どもの頃には
なかったけれど。
ただ、あの頃のまま
蛍の光は、やはり美しい。
また、来年もと…いつまでも
見ていたい光景を惜しみながら
家に帰るこの気持ちも、あの頃のままだ。
【お題:子供の頃は】