これからも、ずっと。私は囚われ続ける。
私の終わらせた物語に囚われ続ける。挫折して折り合いを付け続けて終わらせた物語だった。反応は勿論ない。
それでも好きな物語で、次の物語を書くことは考えてない程まだ囚われてる。
でも、世の中にずっとなんてない。
砂を噛むような毎日も、失敗した物語も。
いつかは状況が、心が変わっていく。
望む望まないにかかわらず。
だから今日の、これからも、ずっと。は、猶予付きのずっとなのだ。
光り輝く夕陽が、辺りの山並みを黄金色に染めてゆく。その光景を川辺りで見ていた。
空も雲も町並みも染めてゆく夕陽は、ゆっくりと山並みに沈んでいった。最後のいっぺんまで強烈な光を放ちながら。
夕日が沈む。
夜が来るにはまだ早い。
明るい空に、黄金の気配が残っている。
君の目を見つめると、胸が高鳴る。耳が痒くなって心臓がドキドキ。まるで満天の星空の下にいるみたいに、ワクワクが止まらなくなるんだ。
でも、君は恥ずかしがり屋だから、僕が見つめると顔を赤くして俯いてしまうね。緩く髪を乱して色づく頬を隠してしまう。その度に僕はもったいないと思うんだよ。
いつかでいいから、見つめ返して、微笑んでほしいなあ。
君の瞳の美しさも好きだけど、僕は君の微笑みが何より大好きだから。
彼の家は郊外の山奥にあるから星がよく見える。
けれども今日は雨。星空の下で一晩を過ごすのは叶わない筈だった。
「でも、これから全国的に深夜4時位には○☓流星群が極大になるんだよ」
そう言って車に天体観測用品を積み込んでいる彼の顔は、子供みたいに嬉しそう。
私も、用意したバスケットとポットを二人分の毛布の隣、後部座席に乗せて、沢山見れるといいわね、と彼に便乗した。
「こういうときのために、免許取っといてよかったあ」
雨雲の下から抜け出せる事に喜びを感じている彼に、私は思わず頬が緩む。
「私も免許あるから、疲れた時は言ってね」
そう伝えると、彼は口をもごもごさせ、嬉しいけど、と急に困ったような顔。
「夜道は慣れないと危ないし、君は僕のワガママに付き合ってくれるだけだし、運転は全部僕に任せてよ」
そこまで言われてしまうと、私としては引き下がるしかない。
けれど彼のワガママに付き合っているだけではないので、そのことはそれとなく伝えてみた。
「私も、流星群楽しみよ?」
「なら尚更、運転は僕に任せて君はドライブも星空も楽しんでいって」
その言葉と弾けんばかりの笑顔に。私は、きゅう、となる心臓を抑え、甘えることにする。
頬が信じられない位熱い。私は、彼のこういうところが、堪らなく、好きだと思う。
真っ赤な顔が恥ずかしくて俯くと、髪を緩く乱して熱い頬を隠した。
気分を一転させて、助手席に乗り込み彼にガムを勧める。
彼はガムを噛む前からやる気満々。運転席に座り意気揚々とシートベルトを締めている。
流星群は、ネットでの中継もあるらしいけど、彼と私は、これから車で雨雲の下を出る。
明日は休み。徹夜の準備はバッチリだ。
流星群を追って、雨の中のドライブが始まる。
それでいい、という言葉には、諦めのようなものが見え隠れしている、気がする。
どこか投げやりなそれでいい、よりは、それがいい、の方が、自分でそれを選んでいる感じがして、私は好きだ。