彼の家は郊外の山奥にあるから星がよく見える。
けれども今日は雨。星空の下で一晩を過ごすのは叶わない筈だった。
「でも、これから全国的に深夜4時位には○☓流星群が極大になるんだよ」
そう言って車に天体観測用品を積み込んでいる彼の顔は、子供みたいに嬉しそう。
私も、用意したバスケットとポットを二人分の毛布の隣、後部座席に乗せて、沢山見れるといいわね、と彼に便乗した。
「こういうときのために、免許取っといてよかったあ」
雨雲の下から抜け出せる事に喜びを感じている彼に、私は思わず頬が緩む。
「私も免許あるから、疲れた時は言ってね」
そう伝えると、彼は口をもごもごさせ、嬉しいけど、と急に困ったような顔。
「夜道は慣れないと危ないし、君は僕のワガママに付き合ってくれるだけだし、運転は全部僕に任せてよ」
そこまで言われてしまうと、私としては引き下がるしかない。
けれど彼のワガママに付き合っているだけではないので、そのことはそれとなく伝えてみた。
「私も、流星群楽しみよ?」
「なら尚更、運転は僕に任せて君はドライブも星空も楽しんでいって」
その言葉と弾けんばかりの笑顔に。私は、きゅう、となる心臓を抑え、甘えることにする。
頬が信じられない位熱い。私は、彼のこういうところが、堪らなく、好きだと思う。
真っ赤な顔が恥ずかしくて俯くと、髪を緩く乱して熱い頬を隠した。
気分を一転させて、助手席に乗り込み彼にガムを勧める。
彼はガムを噛む前からやる気満々。運転席に座り意気揚々とシートベルトを締めている。
流星群は、ネットでの中継もあるらしいけど、彼と私は、これから車で雨雲の下を出る。
明日は休み。徹夜の準備はバッチリだ。
流星群を追って、雨の中のドライブが始まる。
4/5/2023, 1:10:51 PM