9/7/2023, 10:15:43 PM
▼ 踊るように
アイツの声は腹に響く
重厚感がありながら軽やかで、喜怒哀楽が乗っている
隣に立っていたあの頃とは違う
経験から、乗り越え、背負うものがある安定感
もう大丈夫と言わんばかりの広く分厚くなった背中
(怯んだり、妬み嫉みがある訳じゃねぇ)
自分だって、環境は変わった
仲間がいて、あの子だけがいない
(アイツと比べてはいる訳だな)
馬鹿馬鹿しいと思考を止めて、こちらへ向かって来る足音に振り返る
表情が綻んでしまうのは一緒にいて楽しいから
それだけはあの頃と変わらない
足取りは軽く、追い風で体も軽い
背負ったものは重くてもこの足で歩いていける
9/6/2023, 11:19:39 PM
▼ 時を告げる
ふとした時、振り返る
(匂いだ)
後ろ髪引かれるとはこのことかと、思わずそのまま立ち止まってしまう
ありふれている匂いの中でもアレの匂いだけは無意識に反応するのが憎らしく、それほどに自分がまだその刻に居るようで強めに前を向いた
「×××、何でここいるんだよ」
怪訝な顔、こちらも驚く暇もなく同じように眉間の皺を増やす
懐かしむくらいには歳を重ねたらしい
「テメェには関係ねぇ」
また、重なった線が離れていく
何度でも合わさってしまうのを何かのせいにしたくて、苛立ちを隠さず風を切った
9/5/2023, 1:40:28 PM
▼ 貝殻
覚えているだろうか
忘れようとしているだろうか
『また来ましょうね。×××さん』
約束は無効になっただろうが、あの日の事実は嫌でも忘れられない
顔を見れば思い出してしまうけれど、きっと。
「テメェが一番、そういう事嫌いなクセによ」
久し振りにあの場所に行ってみようか
もちろん、独りで。