玄関に入るといつものように恋人がひょこっと顔を出して、パァと弾けた笑顔で俺に飛び込んでくる。
「おかえりなさーい!」
「ん、ただいま」
正面から俺の胸に飛び込んではぎゅーっと抱きつく。これが俺たちの日課だ。
「冷たいですー」
「外、寒かったからね」
そう答えると、彼女はむーと頬を膨らませてからもう一度俺の身体を強く抱き締めた。
「あったかくなーれ」
そうやって自分の体温を分けてくれる彼女に自然と頬が緩んでしまった。
俺は今、星に包まれている。
星の名前を持った恋人に。
おわり
五九三、星に包まれて
今年の終わりも近づき、世間は慌ただしそうだ。
私は仕事納めをしているけれど、恋人はお医者さんだから年の瀬は仕事をしていた。
私は彼を助けたくて家事をしておく。
少しでも彼が家にいる時、リラックス出来るようにね。
年末年始のお休みが穏やかに終わってから、のんびりと過ごすことを楽しみに彼のフォローをしていこう。
おわり
五九二、静かな終わり
あまり本を読むのは得意じゃないんだけど……ちょっと気になった本を買ってみた。
このご時世だからデジタルで買っても良かったんだけど、手触りやページをめくる音も大切にしたくて紙の本を買ってしまったわけです。
年末年始は仕事だから恋人が身体を労わって欲しいと言うから最後の休みをのんびり過ごすことにした。
ぼんやりするのも悪くはないんだけど、恋人が隣にいて、温かいココアの香りが漂っている。そんな中で本を読む時間はとても贅沢だ。
ぱらり。
俺は本の世界に旅立つ。
ぱらり。
何回かめくっていると、彼女が体勢を変えて俺の膝に頭を乗せた。
「どうしたの?」
「んーん。紙の音が心地よいから少しお休みします」
そういうと嬉しそうな顔をしつつ瞳を閉じる。
その表情が愛らしくて胸が暖かくなった。
俺はもう一度本の中に旅立つ。
彼女のぬくもりを感じながらの読書は、最高に幸せだと思った。
おわり
五九一、心の旅路
寒くて目を覚ます。
隣で恋人が眠っている暖かいベッドから抜け出した。
ドアを開けると、眩い光と一緒に冷たい空気が入ってガラスが白くなっていく。
この寒さはおかしい。
私はドアを閉めて色々を見ていると、空気の入れ替えで窓を少し開けていたことを思い出す。
開けていた扉を閉めつつ、時計を見るともう起きた方がいい時間だった。
加湿器と暖房をつける。
彼が起きた時にはご飯が食べられるよう準備しちゃおうかな。
そう思った私は洗面所に足を向けた。
凍る……には程遠いけど白くなった鏡を濡らしたタオルで拭いていく。
さあ、新しい一日を始めよう!
おわり
五九〇、凍てつく鏡
クリスマスが終わって今日は休み。
イベント事の時には仕事が忙しくなってしまうので、一段落してようやく貰えた休みだった。
一緒に住んでいる恋人と出掛けようかなと思ったんだけど、「今日くらいゆっくりしたい」と彼女が言うので家でのんびり過ごすことにした。
普段わがままを言わない彼女。
自分のわがままを全力で言う時は大体俺のためだったりするんだよね。
だから今回の言葉を翻訳すると「今日くらいゆっくり休んで」となる。
嫌だとは言えません。
だって大切にしてくれてるんだもん。
そして午後になってから気温が一気に下がり、陽も落ちると外は雪がちらついていた。
「出かけなくてよかったかも」
そんなひと言をつぶやくと、夕飯の用意をしてくれた恋人が首を傾けつつ隣に立った。
「どうしました?」
「ん、君の言うことを聞いてよかったってこと」
彼女を見つめていると自然と笑顔になってしまう。そして俺を見てからふわっと笑ってくれる。
彼女の色素の薄さが外の雪景色と相まって、雪の妖精みたいにキラキラして見えた。
「ありがと」
「私がゆっくりしたいって言っただけですよ?」
そんなことを言いながら、俺の雪の妖精はまた夕飯の準備に戻っていった。
おわり
五八九、雪明かりの夜