小さく唄っていたら、隣から恋人がジッと見つめてきた。
私は口を止めて首を傾げながら彼を見つめる。
その視線に熱を感じた。
「どうしました?」
「んー」
小さく呟きながら彼が私の肩に頭を乗せてくれる。
「置いてかないでね」
「ふえ!?」
どこか強ばった声にびっくりする。
どこか体温が冷たくなっている気がして、思わず彼を抱きしめた。
「大丈夫です」
少しだけ力を入れる。
「私はどこにも行きませんよ。明日も、これからもずっとそばにいます」
おわり
五七八、明日への光
「きーらーきーらーひーかーるー」
夜空の星を見上げながら、恋人は小さい声で歌う。
俺に目もくれずに、その目に星を写して歌い続ける。
そんな彼女は、どこか楽しそう。
なにより神秘的だった。
冬の寒さで透きとおる空気は夜空の星をより輝かせて彼女の目を惹きつける。
俺は君に惹き付けられているというのに。
ねえ、こっちを見て。
俺だけの星の唄。
おわり
五七七、星になる
左手の薬指に輝くアイスブルーダイヤモンドの指輪。
約束の日が近づいていて、日々胸がドキドキする。
誰かを呼んで何かをする訳じゃなく。書類を提出した翌日に小さなチャペルで写真を撮らせてもらうだけ。
それだけでいいんだ。
約束の日までの今を大切に過ごしていこう。
遠い鐘の音が少しずつ近づいていく。
おわり
五七六、遠い鐘の音
もうお店に行けばクリスマスのコーナーがあって、時期だなあと感じる。
うちではクリスマスツリーを飾ったりしていないから、あまり気にしていなかったんだけどツリーの飾りも沢山あって目を引いた。
ツリーか……。
小さいのがあってもいいかなと思ったけれど、恋人とふたり暮らしとはいえ狭い部屋だからやっぱり厳しいかなーと悩んでしまう。
「ん?」
近くに置いてあるスノードームに目をうばわれた。
少しアンティークめでサンタクロースと小さい雪だるまがクリスマスツリーを囲っている。
手のひらサイズだし、丁度よさそうだな。
持ち上げて台座を見ると左右に動かせるスイッチがあった。
このスイッチはなに?
普通に考えるとオルゴールみたいなのはあるかと思ったんだけど……なんだろう。
カチンとスイッチをオンにすると、下から青いライトが光って雪を散らしていた。
うわ……これ、絶対彼女が好きそう。
スイッチをオフにして値段を確認する。
手が届きにくい値段じゃない。
どうしよう。
でも、これを暗くした部屋の中で光らせて、雪を降らせたら絶対に喜ぶだろうな。
目をキラキラさせて顔がほころぶのが容易に想像つく。
んー。
俺はスノードームを持ってレジに並んだ。
だって絶対喜んで破顔した彼女は可愛いに決まってるもん。
おわり
五七五、スノー
「もう……」
恋人をおんぶして家に向かって歩いていく。
そんな彼女は気持ちよさそうな顔でスヤスヤ眠っている。
彼女と俺の共通の友達から「酔っ払って寝ちゃったから迎えに来て」と連絡があった。
気持ち悪くなっていないみたいだから良かったものの、ほとんど酔いつぶれているに近い。
家に帰ったら寝返せてあげるにしても、起きたらしじみの味噌汁でも作ろうかな。
レトルトのものがあったはず。
無防備な寝顔を覗く。
困った恋人に苦笑いしてしまうけれど、可愛いんだよな。
会社の忘年会だから変な輩が居ないから安心していたけれど、ここまで飲むのは注意だなー。
とはいえ。
明日は二日酔いで酷いことになるからそれがバツだな。
眠る前には頭が痛くならないように願いながら、撫でてあげよう。
そんなことを考えながら家に向かって足を早めた。
おわり
五七四、夜空を越えて