目を覚ますとズキンッと重い痛みが頭に走る。
くわんくわんして起き上がるのを諦めてベッドに落ちた。
えーっとどんな状況?
昨日、家に帰った記憶がなくて……。なんで家に帰っているんだろう。
そんなことを考えていると、ドアが空いていい香りが漂ってきた。
「あ、目が覚めた?」
優しい声で恋人が笑顔を向けてくれる。お盆にマグカップがあって、それがいい匂い。これは、おみそ汁?
「起きられそ?」
「アタマ重いですー」
「そりゃそうだ」
彼は慣れた手つきで私の身体を起こし、背中に枕とクッションを入れる。
この手際の良さ、さすがお医者さんです。
私はクッションと枕に寄りかかると彼が持ってきたマグカップを渡してくれた。
「二日酔いにはしじみのおみそ汁だよ」
手渡ししてくれたマグカップを口にしながら、ぼんやりと考える。
そうだ。昨日は会社の人と忘年会で呑んだんだ。
なんか気持ちよく呑んだ記憶はあるんだけれど。本当にどうやって帰ったのかなと……考えなくても彼の顔で分かる。
「迎えに来てくれた?」
「酔っ払って大変って連絡来たからね」
私はちびちびとおみそ汁を飲みながら、彼から視線を逸らす。
記憶がないんだから、まあまあヤラカシテイル可能性もあるわけで。
「ご、ごめんなさい」
「元々迎えに行く予定だったから構わないよ」
「え?」
優しく頭に手を置いて撫でてくれた。
あ。
これ、覚えてる。
私は彼をじっと見つめた。
「どうしたの?」
「昨日も、こうしてくれました?」
彼は少し驚いてから、いつもの太陽のような笑顔ではなく、柔らかい笑顔で微笑んでくれる。
「さあ、どうだろうね」
どこか嬉しそうな笑顔に胸が高鳴った。
おわり
五七三、ぬくもりの記憶
「うわ、寒っ」
仕事終わりに恋人と待ち合わせ。
彼女が車で迎えに来てくれるっていうので、待ち合わせ場所に走って向かった。
頬に当たる風が冷たくて痛みを感じる。もしかしたら雪でも降るのかもしれない。
それくらいの寒さだった。
角を曲がると待ち合わせの駐車場だから足元に気をつけながら曲がると車のそばに彼女が立っていた。
「ちょ!?」
うっかり出した声に彼女が反応して、俺に笑顔を向けてくれた。
色素が薄い上に、白や水色をメインに服を選ぶ彼女だから冬の精霊みたいでドキッと胸が高鳴る。
「なんで外に出てるのー?」
「え、早く会いたいからです」
当たり前のように言う彼女。
確かにコートは着ているけど、どう見たって寒いのに。
俺は彼女の手を取ると冷たくてびっくりした。
「冷たっ!」
「え、そうですか?」
俺は彼女の両手を取って口元に寄せてハアと息をかける。
「うふふ、暖かいです」
体温を分けたくて、しっかり手を覆った。
あ、でもダメだ。
「ねえ、俺が運転する。キー貸して」
こんな寒いところに居て、指先がこれだけ冷たいんだから身体だって冷えているでしょ。
暖かいところにさっさと向かおう。
おわり
五七二、凍える指先
暖かい日がまだある中で、一気に寒くなる日が繰り返される。
こんなに寒暖の差が激しくなると体調を崩し安くなってしまう。
年末年始の病院は毎年人手が足りなくなるから、休みを取るのは難しい。
だから忙しい時期を過ぎてから恋人と癒し旅行にら行くことを計画していた。
ぼんやりと空を仰ぐ。
白い吐息が立ち、俺の視界をぼかしてはクリアになる。
都会だと雪原を見ることもないから、そういうところに行きたいかも。
運動もできるからスキーやスノボを楽しみに行ってもいいな。
でも雪が降るところで温泉に浸かるのもいいな。
今日、帰ったら恋人に相談しよう。
おわり
五七一、雪原の先へ
「見てくださいー!」
前を歩いている恋人が振り向く。
寒空の中、寒さで頬を赤らめつつ息を吐いた。
「息が白くなってますー!」
目を輝かせて無邪気に笑っている彼女が愛らしくて自然と表情が緩んでしまう。
本当に可愛くて愛しいね。
おわり
五七〇、白い吐息
きらめく街並みの中には、大好きな恋人が命懸けで人を助けに行っている。
彼は優しくて太陽のような笑顔をくれる救急隊員さん。
この都市は眠らない街だから、昼夜問わずに誰かが助けを求めている。そんな人たちを助けたいって手を振ってくれた。
彼の背中はとても頼もしい。
危険なことはして欲しくない気持ちはあるけれど、それでも彼の背中に誇りを感じて。
やっぱり好きだな。
って思ってしまう。
だからこそ、一緒にいる時はめいっぱい甘やかすんだ。
きらめく街並みのどこかに、彼がいる。
おわり
五六九、消えない灯り