ここまでともに進んできた仲間のひとりから、
「別の道を進みたい」と告げられた。
…頭を鈍器で殴られた気がした。
小さい頃から俺、おまえ、そしてあいつの3人で
行動してきたその中のひとりであるおまえ。
ずっとこのまま一緒だと、
頭のどこかで勝手に感じていた。
ずっとなんて、無かった。
でもずっと一緒だったおまえだから。
そんなおまえが悩みに悩んで出した答えだから、
俺とあいつは背中を押す。
別の道でも頑張ろうな。
240112 ずっとこのまま
息を吐くと白い気体がほわっと空中に浮かぶ。
そんな様を見ると寒さが身に染みてより寒くなる。
隣で歩いていたあなたが、
「じゃーん!」
と言いながらカイロを取り出した。
「自分用とあなた用に持ってきちゃった!褒めて!」
「…ありがとう。流石。」
「ふざけたのに!素直に返されると照れちゃう!まあそんなところが好きなんだけど。」
…あたたかさと嬉しさと恥ずかしさとが身に染みてあつくなってきた。
240111 寒さが身に染みて
人見知りでそのくせ頑固。
きっと扱いにくい時の方が多かったでしょう。
これまでごめんね。
そしてありがとう。
こんな僕も、20歳になりました。
少しはあなたたちに近づけたかな?
…いや、全然だな。
独り立ちしたつもりになっているけど、
まだまだお世話になりっぱなし。
これからも迷惑かけるかもしれない。
だからあなたたちへのありがとうを、
これからたくさん返させて?
だから長生きするんだよ?
…絶対だよ?
これまで育ててくれてありがとう。
あなたたちの子どもに生まれてよかった。
240110 20歳
「三日月見てるとクロワッサン食べたくならない?」
情緒もへったくれもない一言に脱力したが、徐々に笑いが込み上げる。
その日から三日月を見るとクロワッサンが食べたくなる魔法にかけられた。
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「ねえ、月見て?」
「今見てたよ。クロワッサン食べたくなるね。」
「わかる!同じこと思った!」
電話でそう答えるあなた。
…僕に魔法をかけたことを忘れているらしい。
あなたが魔法をかけたんだと説明したらどんな反応するかな。
僕の話よりお土産のクロワッサンに興味津々なんだろうな…なんて思いながらあなたの待つ家に帰る。
240109 三日月
洋服を選ぶ時、色とりどりの服の中から何故か黒を選ぶ癖がある。
無難だから。
汎用性が高いから。
そう思われるかもしれないが違う。
あなたが「やっぱ黒似合うね!」と言ってくれたから。
単純だけどあなたが褒めてくれた色を纏いたい。
240108 色とりどり