家人の両手から白い毛糸玉がまろび出た。
毛糸玉は真っ黒くてツヤツヤの瞳で私を見上げる。
まっさらな命。
きゅんと鳴ったのは、私の胸の音か、それとも毛糸玉の「ヨロシクネ」の声か。
ヨロシクネ、と毛糸玉の頬にkissをする。
胸いっぱいに吸い込むと、ミルクのようなまあるい匂いがした。
毛糸玉から立派な成犬になり、季節が巡る。
喜びの日も、悲しみの日も、愛犬はほっこりと私を見上げ、尻尾を振る。
アリガトウネ、と愛犬の頬にkissをする。
胸いっぱいに吸い込むと、お散歩帰りの草の匂い、湿った土の匂い。
そしてフードの匂い、さっき焼いたサンマの匂い、何故かやみつきになるヨダレの匂い。
幸せで胸がきゅうっと鳴る。
余命宣告を受け床に臥せる愛犬は、瞳だけを動かして、
なのに、にっこりと尻尾を振り、私に愛を伝える。
爪をこすりつけた黒板のような音を立てたのは、くいしばった私の歯からか、それとも張り裂けた胸の音か。
アイシテル、と愛犬の頬に顔をうずめkissをする。
何度も何度も深くkissをする。
胸いっぱいに吸い込もうにも、嗚咽でままならない。
いかないで、
いかないで、
愛してる、
離れたくない。
kiss...
kiss kiss kiss kiss.........
千年後
私の子孫はこの世に受け継がれているのだろうか?
もしそうなのだとしたら、、、、
人間に生まれたことを喜び、人間の為に尽くす愉しさを見出しているだろうか?
だとしたら、それはとても嬉しいことだ。
、、、、、そんな風に夢想しつつ、私は命ある限り、前進していこう。
よく働き、学び、健康維持に努めよう。
そうすれば、より永く、より多くの人をお手伝いできるだろう。
触れ合う人全てに人格と愛すべき者があり、それぞれの生き方がある。
その人の素敵なところ、尊敬すべきところを見つけ、
全ての人がそれぞれの人生に向き合う戦友として
敬意を持って接しよう。
命ある限り。