お題「手を取り合って」
お題「優越感、劣等感」
お題「これまでずっと」
お題「目が覚めると」
お題「日差し」
夏の日差しがじりじりと肌を焼くように照りつけている。私はこれが結構好きだ。太陽の下で生き物が一番活発な時期に、同じように日の光を浴びるのは、何だか生きている実感が強く持てる気がする。
もしくは、鉄板とかオーブンで焼かれる肉と言われれば、その気持ちもちょっとわかる。でもまぁ焼かれる肉の気持ちなんてそうそうわかるものでもないので、それはそれで楽しいものだと思う。
日向ぼっこと言うには苛烈な日差しに焼かれながら辺りを見回すと、何やら親の仇でも誅する瞬間のような、憎々しげな表情で庭に水を撒いている君がいる。普段薄ら笑い、もとい微笑みを絶やさない人なので、なかなかレアな光景だなと思いながら眺める。そんなに思い詰めた顔をしながら水を撒くほど、そんなに暑いのが嫌か。
彼の心の内がどうかは置いておいて。ホースから撒かれる水が日差しをキラキラと反射させているのが綺麗だなと思う。それよりも水を撒いている君の、ミルクティのような薄い色合いの髪が日光を受けてキラキラしているのは、もっと綺麗だ。
「もしかして、気持ち悪い?」
私がぼんやり見ていることに気付いた彼が、ちょっと焦ったような声音で言うので、率直に答える。
「ううん、綺麗」
「何が?」
私の応答に君がきょとんとした。きょとんと言うか「何言ってるんだこいつ」みたいな虚をつかれた顔と言うか。何をそんなに戸惑っているかがわからずに首を捻ると、彼はちょっと考え込むように視線を落として、言葉を探して言った。
「いや、えっと、日差しに当たりすぎて具合悪い?」
どうやら急にぼうっとし始めた私の体調を心配したらしい。それに首を横に振って答えて、もう一度君を、と言うか君の髪を見つめる。
「なに」
じっと見詰められて、居心地が悪そうに君が身じろぐ。汗で束になった髪が揺れる。それがまた綺麗にキラキラするものだから、
「君はもっと、お日様に当たった方がいい」
そう教えてあげると、彼はいよいよ憮然とした表情をした後に決意を固めたような顔をして、
「僕、何か君の機嫌を損ねることしたかな」
不満があれば言って欲しいと、話し合いの姿勢を取り始めてしまった。
君の中でお日様の下に出るのは罰か何かと同列に並ぶくらいに嫌なのか、と思うと可笑しくて、申し訳ないけどお腹を抱えて笑ってしまった。