よあけ。

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10/28/2023, 5:45:53 PM

お題:暗がりの中で

コーヒーを飲んでいる。
62ページ目にシミを付けてしまった。
だがあまり気にすることでもない。
ぼた、ぼた、シミを付けているのは茶色だけではないのだから。
ヤギのようにこのページを食ってしまえたら、俺の腹の中に落とし込めたら。
たら。
たら。引きずって、椅子から立ち上がった。
もう深夜になるらしいから軽食を摂ろう。
そう机に手をついたとき。
ガチャン。
誤ってカップを弾いてしまった。
派手に割れて、溢れて、インクまで溶かしてしまった。
ああ、ページを喰ってしまった。
まあ、いい。
どうせ、暗がりの中で文字なんて、見えていやしないのだから。
憂鬱で、陰湿で、コーヒー臭酷いこの部屋で、一人。
カフェインを多量摂取して、隈を作って。
ああ、お前の置土産、俺、コーヒー色に。
くっちまったなあ。

10/27/2023, 1:28:29 PM

お題:紅茶の香り

紅茶の香りに貴方の影を重ねた。
貴方がいなくなって5年は経つ。
貴方は僕が淹れた紅茶を好んでよく飲んでくれていた。いや、“よく”ではないか。良く、呑んでくれていた。
紅茶を淹れれば、部屋の角で怯えと絶望の瞳をシーツで隠した貴方は僕を見上げ「ありがとう」とティーカップを両手で受け取る。
ミルクを注いであげるとドロりと目を溶かし「あなただけが私の闇の中にいるのよ」「愛しているわ」と言う。
腹の中でミルクティーがグルり渦巻く。
懐かしい、陰湿な空気。
僕はずっと夢を見ている。
貴方が……君が、僕に呪いをかけたからさ。
ねえ、■さん。
毎朝、毎晩、毎朝、毎晩、紅茶を淹れ、ミルクを注ぐ。
僕のルーティンさ。
マーブル模様を描く液面に君の瞳を思い出し、紅茶の香りに貴方の影を重ねる。
毎朝、毎晩、毎朝、毎晩。
ねえ、■さん 紅茶 愛しているよ。

10/24/2023, 2:26:22 AM

お題:どこまでも続く青い空

何度も何度も手を伸ばした。あなたを掴めたらと。
遥か彼方広がる青いあなたはいつでも僕を見ていた。
どんな僕でも見ていた。
なあ。
お前はどこまでいくんだ。

10/16/2023, 3:27:24 AM

お題:鋭い眼差し

私が今からやろうとしている行いを咎めるように。
私が今からやろうとしている哀れを宥めるように。
その鋭い眼差しが、後ろめたく
ない。
後ろめたくない。全く。
是非その目で目撃してほしい。
そして証人となれ。
私はこれなら狂言をする。
その鋭い眼差しで、お前も舞台の一員となれ。
お前だけ逃してなどやるものか。
引きずり上げてやる。

10/13/2023, 3:08:40 PM

お題:子供のように

所謂「子供らしい子供」ではなかった僕が「子供のようになりたい」と言うのは変な話だと思うんです。子供を知らない人が子供のようになんて言えるはずありませんでしょう。僕が思い描く「子供」はあまりにも純粋すぎている気がしますし、では自分に置き換えてみようと思うとあまりにも歪ですし、では他の例を上げるとただのクソガキになります。子供って思ってるよりきれいじゃないでしょ。「汚れを知らない純粋無垢」なんて嘘っぱちで夢物語ですよ。大人は子供にそうあってほしいらしいですが。「大人」のほうが夢見がちかもしれませんね。そういうのを「子供のよう」と言うのですかね。

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