お題:あいまいな空
傘立てに入れてたはずなのに空っぽだった。
「降るかもしれないから」ってせっかく持ってきたのに雨降らず、傘は盗まれ。
ぜーんぶあいまいな空のせい。
「あー、その日頑張って空けてみるわ」
煮え切らない返事もあいまいな空のせい。
「最近天気悪いし」
それもこれもぜんぶあいまいな空のせい。
甘いものでも買おうとしたのにお財布空っぽ。
あ〜あ、からっぽ、からっぽ。
通知空っぽ。ポスト空っぽ。
冷蔵庫空っぽ。予定空っぽ。
頭空っぽ。心空っぽ。
なんかどっかに落としてきたかなぁ。
なにをどこに落としてきたんだっけ。
ぼんやりあいまいな空っぽ。
お題︰好き嫌い
好き嫌いしちゃだめよ。
出された料理は食べないと。
毒を食らわば皿までね。
好き嫌いしちゃだめよ。
どんな人でも丸呑みしないと。
骨の髄まで平らげてね。
お題︰朝日の温もり
ふんふん、鼻歌。
こぽこぽ、心地。
ふわり、ふわり、朝日の温もり。
鳥のたかね、しおの匂い、水の音。
ふわり、ふわり、彼女の微笑み。
お題︰世界の終わりに君と
君と花を飲みたい。
君と星を食べたい。
世界の終わりに君とワルツを。
有り得ない話じゃないよ。
身近なもので洒落込もうよ。
靴を履いて手を取って
音楽はスマホから
金平糖持って外へ出て
花を摘んで水に浸して
世界の終わり、君とそのまま。
いつもと同じように。
お題︰狭い部屋
ソファでは決まって寝たふりをする。とろんとした微睡を彷徨っていたいから。あなたの気配がするから。狭い部屋、二人分の呼吸が聞こえる。あなたは僕に毛布をかけて近づいて、缶ビール片手左右に揺らしながら、そっと慈しむのでしょう。囁くような鼻歌が木霊するこの部屋は、きっとまだ淡いカーテンを透かした光が揺らめいていて、僕の頭の上で3拍子を刻むあなたは眩しそうに目を細めている。その温もりはたいそう幸せそうで、けれど確かな寂しさばかりが重なり響き合う。互いに気づかないふりをするから、ぶつかり合うのが怖いから、不器用な優しさとやらがつっかかっている。それはきっと、いつでも物分りのいい人として目を覚ましているから。分かっている。それでも尚気づかないふりをしている。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
何もなかった。さも当然のように離れていく。知っているのに。狭い部屋で二人、確かに息をしている。狭く薄明るい部屋が心みたいだと思った。