街の明かり
改札を抜けてすっかり暗くなった空にため息をこぼす。星空とは呼べない霞んだ夜空。不恰好に欠けた月と街の明かり。一人で歩くには暗い気がして、躓かないように下を向いて歩いた。
七夕
「私たちって幸せな頭してるんだろうね」
駅に貼り出された七夕祭りのポスターが目に入る。今年も半年以上過ぎたのかと、僕の頭はどこか他人事のような感想を浮かべる。
「一年に一回しか会えないって、仕事を忘れて遊び呆けた罰でしょ。戒めの意味を含めて昔話になったのに、それがロマンチックだなんて」と君は続ける。
「年に一回のペースで労働意識を正されるより、星に願いをってほうがロマンチックでいいじゃん」
「だよね」と君。
話を振ったくせにそっけない。とりとめない会話はいつものことで、でも会話にオチを求めるのもいつものことで。
「七夕祭り、一緒に行かない?」
「いいよ」と君。
私たち、と言うのだからやっぱり君もそうなんだ。すると、ここまでの会話全てが、まるで君の手のひらの上で転がされていたような。もしそうだとしたら……
「……いいか」
待ってましたと言わんばかりの君の笑顔を見たら、全部どうでもよくなってしまった。
この道の先に
信じていた、あるいは忘れていた、進む先には必ず意味があると思っていた、
窓越しに見えるのは
夜が明けた。
今日も眠れないまま、布団に身を潜めていた。憂鬱をいっぱいに閉じ込めた部屋の中、カーテンの隙間から差す光を睨んでいた。
怖い。
朝が怖い。意味もなく訪れる朝が怖い。私の存在を掻き消すような朝日が怖い。
壁一枚を隔てた外の世界は、どこまでも遠く見えていた。
朝日の温もり
目が覚めるとすぐにひどい頭痛と吐き気に襲われた。隣には裸の女が無防備に寝ていて、昨日の夜のことを少しずつ思い出す。とりあえず顔を洗って水を飲もう。喉がカラカラだ。
「あ、おはよう」
「おはよう」