七夕
「私たちって幸せな頭してるんだろうね」
駅に貼り出された七夕祭りのポスターが目に入る。今年も半年以上過ぎたのかと、僕の頭はどこか他人事のような感想を浮かべる。
「一年に一回しか会えないって、仕事を忘れて遊び呆けた罰でしょ。戒めの意味を含めて昔話になったのに、それがロマンチックだなんて」と君は続ける。
「年に一回のペースで労働意識を正されるより、星に願いをってほうがロマンチックでいいじゃん」
「だよね」と君。
話を振ったくせにそっけない。とりとめない会話はいつものことで、でも会話にオチを求めるのもいつものことで。
「七夕祭り、一緒に行かない?」
「いいよ」と君。
私たち、と言うのだからやっぱり君もそうなんだ。すると、ここまでの会話全てが、まるで君の手のひらの上で転がされていたような。もしそうだとしたら……
「……いいか」
待ってましたと言わんばかりの君の笑顔を見たら、全部どうでもよくなってしまった。
7/7/2024, 4:32:39 PM