叶わぬ夢
二度と叶わない。
彼が帰ってきて下さい。なんて。
彼は病気で死んだ。最後はぎゅっと私の手を握りながら、息を引き取った。最後まで死にそうなことを、私に言わないまま。
「大丈夫、大丈夫。」
そういい、確信のない生存を伝えながら、最後を見送った私は、後悔しかない。
きっと、もうダメだと言うことを、私に一言でも伝えたかったのかもしれない。
きっと、ありもしない希望を言われて嫌だったに決まってる。
今更、言いたいことなんてないのに。
___彼が帰って来ますよう。
花の香りと共に
これは、恋人からもらった花。
手に収まっているのは、真っ赤に染まった薔薇。
これは、職場の人から頂いた花。
手に収まっているのは、ディモルフォセカ。
どれも素敵な花言葉がある。しかし、世の中には、とても闇深い花言葉を持つ、花も存在する。
私の正体は、花農家。
毎日、花の香りと共に生きていく。
心のざわめき
一人の大切な彼氏。
私は、毎日彼のお見舞いに赴く。
しかし、ここ一ヶ月意識を戻さない彼に、毎日花束を置いて、聞こえないことはわかっていても、話しかけた。
しかし、ある日。
意識のない彼が、突然私の右手を掴んだ。私に、どこにも行かないでと言わんばかりに。やがて、帰らなくてはならない私は、その手を離して帰宅した。しかし、帰宅してから感じた。
いつもには無い、何か変な感覚。
なんだろう、この心のざわめきは。。
君を探して
お願い、見つかってくれ、!
何度願ったか分からない。僕と恋人にまで関係が発展した彼女は東日本大震災で津波に飲まれ、行方不明になった。
自分が、彼女を諦めることは出来ない。
だから毎日探していた。何ヶ月経っても。ずっと
しかし、世界は残酷だ。
「彼女さんは、見つかりませんでした」
自衛隊に言われた一言に、悔しさを覚えた。
3/11の前日まで、キスをして、身体を重ねた日々
忘れることは出来ないのだ。
「どうか、まだ、お願いします」
「彼女を、、彼女を、、!」
透明
今日、僕は透明人間になった。
妻と、子を残して。
建設中の建物の最上階で、頭から落下した。
衝撃音と共に、自分の身体は砕け散った。
幸い、即死だったため痛みは感じない。それでも、嬉しいとは思えないのだ。
がんで入院してる妻と、二人の子供。
残してはいけないものを残した。
妻に、入院費や治療費、生活必需品、全て稼ぐと告げたのは私だ。
子供の養育費、ご飯代、生活必需品代。
頭が真っ白になった。
それと同時に怒りが湧いた。
生前の私の顔を見たくもない。
胸ぐらを掴みたいほどの怒りが湧いた。
その反面、私の顔を見た妻は優しかった。
「頑張ってくれたんだね、ありがとう」
「無理、させてごめんね、、」
今だけは、
溢れた涙を堪えなくてもいいだろうか。