鳥のように
『翼をください』
今 私の願い事が叶うならば翼が欲しい
この背中に鳥のように白い翼付けて
下さい
この大空に翼を広げ飛んで行きたいよ
悲しみのない自由な空へ翼はためかせ
行きたい と歌った合唱コンクールは、
見事に大成功を収め僕たちのクラスは
優勝を勝ち取った。
さよならを言う前に
『さよなら 元気で』その言葉を唇の
上に乗せる前に君の泣き顔を直視して
しまったものだから僕は、何も言えず
最期に君の頬へと腕を伸ばし君の体温を
掌で感じ指先に刻みつけ君の手が僕に
重ねられる瞬間 僕の腕は、君の頬から
離れ ゆっくりと僕の瞼は、閉じていった。
そうして最期の瞬間 君にさよならが
言えなくてよかったと心の中で
安堵した。
空模様
白い薄い雲が刷毛で、塗った様にたなびく
カンカン照りの光が青い空で主張している
暗く澱んだ空から、灰色の雲が厚く
どんどんと積み重なって行く
ドンピカリと稲光が光り空が裂く
厚い雲から、何かが爆発したように
大粒な雨が際限なく後から後から
降ってくる。
まるで悲しみを訴える様に
紫と赤色のグラデーションが重なって
夕方と夜の境目が出来る。
街が眠りに付くため瞼を閉じる。
星々が煌めく闇色の黒が映える
街灯の明かりの光が目立ち
相反する闇と光がお互いの存在を
支え合い主張し合い静かな夜空を
優しく色どっている。
見る時間 見る場所で空模様は、
次々と形や色を変える。
空の喜怒哀楽が映し出され感情を
露わにして、私達人間に怒ったり
一緒に笑ったり寄り添う様に悲しん
だりしているみたいだ。
さて 今日の空模様は、
何色だろう?
私は、そう思いながら今日の
空を見上げた。
鏡
パリーンと鏡が割れた。
「一生懸命 頑張っていればきっと
良い事がある」そう言って僕を労る様に
にっこりと微笑んだ母さん
今にして思えばそれこそが嘘だったのかも
しれない
鏡の前でにっこりと笑顔を作って
いつも仕事に出掛ける母さん
酒浸りになって昼まで寝ている父さんの姿を見ない様にいつも鏡の前で笑っていたの
かもしれない
頑張れ 頑張れと言っていたのは、
いつか鏡の前の自分が現実になると
自分に言い聞かせていたのかもしれない
結果 過労で体を壊した母さんは、
現実を見れずに死んでしまった
後に残ったのは、アルコールが抜けない
父さんとまだ誰かの保護なしでは、生きられない僕だけが残った。
母さんの笑顔を映していた鏡は、
粉々に割れ 代わりに映っているのは....
目を背けていた歪な現実だけだった...。
いつまでも捨てられないもの
久しぶりに押し入れや納戸普段あまり開けず忘れている所の荷物を出して整理していると思いも掛けず懐かしい物が出て来る事がある。
子供が、小さい頃に肌身離さず持っていた
ぬいぐるみや宿題の作文
独身時代に自分のご褒美として買った
バックや装飾品
押し入れにしまっている時は、
とっといていた事も忘れているのに
久しぶりに取り出して、見つけた時には、
懐かしさが込み上げて整理をしていたはずなのに余計散らかしてしまう
そうして結局 使うかもしれないから
思い出だからといろいろな理由を付けて
捨てる理由より捨てない理由ばかりを
探している。
そうしてなかなか自分では、捨てられない物ばかり増えていきまた押し入れに
しまってしまう。
そうしてまた取り出しては同じ事を
繰り返しいつまでも捨てられない物が
押し入れの中に増えて行く。