病室
真っ白な天井 真っ白なシーツに囲まれた
ベッド 細い点滴のパックのチューブに
繋がれた君の腕その点滴のパックを
車輪で、引きながら病室を出て
病院内を歩き回る君 この建物の中が
君の世界 他の入院患者さんが居る
休憩スペースで 楽しそうに
お喋りをする君 人と接する機会も
この病院内の中だけ
だけどこの狭い世界で君はいつだって
誇らしげに笑ってる。
君が居るだけで周りの患者さん達も
元気がもらえる様につられて笑う
看護師さんや君の担当の先生も君を
眩しそうに見て笑う
だから君が居なくなった病室は、
灯が消えた様に静かだ
君の死をたくさんの人が惜しんでくれた
泣いてくれた。
もちろん僕もその一人だよ!!
さよならは言わない
きっと生まれ変わった君がまたたくさんの
人を笑顔にしていると想像できるから
君は、この病院内の太陽で アイドルだった。
たくさんの笑顔をくれた君へ
ありがとう 僕は、君と出会えて
心から幸せだったよ....
だから また絶対何処かで会おうね!!
明日、もし晴れたら
明日、遂に憧れだった君とのデートに
こぎ着けた。
後は 明日の天気を祈るだけ
そうして、明日 真っ青な青空の快晴に
なったら君に僕のこの思いを伝えたい
鮮やかな色とりどりの花束と一緒に...。
だから、一人でいたい。
僕は、昔から、一人でいるのが好きだった。
お一人様も全然苦じゃ無いし
寧ろ心が静かで、穏やかになるから
好きだった。
寧ろ集団の中に居ると心が乱れる。
「ねぇ 一人で居ないで、こっちに来て
皆と遊ぼうよ!」と言って僕の気持ちも
聞かず一方的に手を取る 友達も
「あの子 ぼっちで可哀想」と勝手に僕に
憐れむ視線を向けるクラスメイトも
皆 皆 お門違い 勝手に僕を決め付けて
勝手に勘違いして
そう言うのを見たり聞いたりしていると
無性にイライラしてくる。
気持ちが攻撃的になる。
そんな自分になるのは、嫌だから....
だから僕は、一人でいたいんだ....。
澄んだ瞳
キラキラと大きくて 丸い澄んだ瞳を
煌めかせて 水槽に手の平をべったり
付けて、水族館の魚達に夢中な我が子の
横顔をパシャリとスマホのカメラ機能で
宝物の宝石の様に枠の中に閉じ込めた。
嵐が来ようとも
外は、ざあざあと 土砂降りな雨
風も吹き荒び 雷も空を割る様に鳴る
こう言う時は、家でじっとしているに
限る。
普通は、俺の様に思うのが普通だ。
そう、普通は....
「お兄ちゃん プール行こう!」
弟が、お気に入りのプールバックを持って
俺に話し掛けて来た。
「いや 何言ってんのお前....
外の天気が見えないの?
テレビでも 不要 不急の外出は、
控える様に警告してんじゃん!」
「どうせ濡れるんだから関係無い!」
弟は、拳を振り上げて、今日行かないと
意味が無いと言う様に手足をばたつかせた
「いや 関係あるよね! 雷に打たれて
死にたいの?」
弟は、ぷくっと頬を膨らませて
だんだんと支離滅裂な主張を
俺に展開する。
「電気風呂があるんだから電気プールが
あっても良いはずだ!」
「いや 何なのお前は、避雷針にでも
なるつもり?」
梃でも動かない俺にしびれを切らしたのか
弟は....「もういい!一人で行く!」と口を曲げて俺に踵を返そうとする 弟は、玄関に
向かおうとする。
いや 何なの弟のこのストイックさ
嵐が来ようとも折れない心は、
使い所を間違わなければある意味立派だが
俺は、さすがにやばいと弟を止めようと
腰を上げる。
しかしその前に「何 馬鹿な事やってんの
外に行ったら今日のおやつ抜きにするからね!」と俺が止める前に母親の雷が弟に
落ち弟は、泣きながら部屋に戻ったのだった。
弟よ!確かに俺は、今日一緒にプールに
行こうとお前と約束したがまさか
天気関係無く行こうとするとは、
俺も予想が付かなかったぞ!
弟は、いじけて部屋でいつまでも泣いていた。
後日 俺は、約束通り弟をプールに
連れて行った。
弟は、無類のプール好きなのか
はたまた俺のうぬぼれでなければ
極度のブラコンなのか
そんな事を俺の隣を嬉しそうに歩く弟を
見ながら俺は、考えていた。