楽園
緑豊かな 清廉な水が湧き出る地
『セフィーナ』
機械文明が発達した町
『メガロイド』
太陽が降り注ぎ 食物が豊富に
取れる園
『アシム』三つの国の人々は自分達の
住んでいる国が一番の楽園だと信じて
疑いませんでした。
それぞれの一番偉い子息 子女達が
留学と称してお互いの国を回るまでは
まず一つ目の国『セフィーナ』を回り
『メガロイド』と『アシム』から来た人達は新たな発見をしたみたいに目をきらきら
させて豊富な資源と水の綺麗さに驚き
ました。
この水はどうしてこんなに綺麗なのか
『セフィーナ』の人に尋ねました。
自然に出来た丘陵地帯から水が湧き
そこから流れて来る事を教えられました。
次に行った国『メガロイド』は
見たことの無い機械達が動いて人々を
助けていました。
荷物の運搬や上げ下ろし人間が行くには
少々危険な場所の移動も機械達の力を
借りればスムーズにこなせる事を
知りました。
最後に行った国『アシム』そこは他の二つの国と比べると太陽の光が少し暑く
衣装も風が通りやすい薄い生地の服が
売られていて服の装飾も細かくてカラフルなビーズみたいな物が連なって独特の
鮮やかな模様が衣装を色どっていました。
そうして何より食べ物が他の国より通常の
倍位の大きさで実っておりとても
美味しかった事に
『セフィーナ』と『メガロイド』の人達は
感動しました。
こうして三つの国の人達は楽園は自分達の
国だけでは無い事を知りました。
そしてこれからは、お互いの国の良い所
発達している所を分け合って
足りない部分を補って助け合って
生きていこうと約束し
三つの国は前よりも平和で活気があり
三つの国以外の所からも楽園と呼ばれる
様になったのでした。
風に乗って
ぽーんと手から放られた紙飛行機が
風に乗って飛んで行く。
傾きながらもゆっくりと飛距離を伸ばして
行く。
一体どこまで行くのだろうか?
そんなことを思いながら紙飛行機が
落ちるまで飛ぶ姿をじっと見ていた。
刹那
一瞬の刹那の後 まるで時間が止まったみたいにゆっくり流れる。
棒高跳びのバーを背中から飛んで
スローモーションみたいな感覚で
上からマットを眺めるみたいに
体が刹那浮遊する。
バンッと言う音と共に気が付いたら
バーを体が飛び越えてマットに
背中が付いていた。
会場の音が刹那 無音になり
一瞬の静寂 遅れての歓声
仰向けからのガッツポーズ
その瞬間何もかもが報われた様な
達成感が胸の中から湧き上がった。
生きる意味
生きる意味なんて自分じゃ良く分からない
分からないからたまに死にたくなる。
自分が此処に居て良いのか自信が持てない
だけど自分じゃ見つけられなくて
消えてしまいたくなっても
第三者である君が「此処に居てよ」と
声の限りに叫ぶからまるで命を張る様に
「君が居ないと寂しくて死んじゃうよ」と
泣き叫ぶから 僕はまた君に引っ張っられて此処に戻って来てしまうんだ。
まるで罪悪感の様に 駄々を捏ねる子供を
あやす様に僕はしょうが無いなあと笑い
君の涙を拭く為に戻って来ざるを得ないんだ。
また今日も君のせいで死ねなかった。
仕方ないから君が僕より先に死ぬまで
一緒に居ようと決めた。
そうして僕も気付かぬ内にいつの間にか
それが僕の生きる意味になっていた。
善悪
はぁ はぁと息を切らして駆け出す。
追い付かれる前に遠くに逃げる。
「そこまでだ!」不意に目の前に警官帽を
被った男が現れる。
俺は横道に逸れようと方向転換する。
相手は、そうはさせず俺の背中に
タックルして俺の動きを止める。
俺は気が付いたらうつ伏せになり
腕を取られて手錠を掛けられていた。
俺の罪状は、窃盗 ほんの出来心なんて
言い訳にもならない事は分かっている。
お人好しの父さんと母さんが借金の
連帯保証人にならなければ、
きっと今でも幸せな毎日だったのに
何で どうして何で今 俺は、犯罪者に
なって居るんだろう....
俺が項垂れていると俺の横から声が聞こえた。
「山田....?」名前を呼ばれ視線を転じると
俺を捕まえた警察官が目を丸くして俺を
見ていた。
俺はきょとんとして警官を見つめる。
(何だ警察に知り合いなんて居ないのに...)
俺が戸惑っていると
そいつは、警官帽を取って髪を掻き上げる。
「わからねぇか 髪も黒く染めちまったしな ほら学生の頃うぜえ位にお前が屋上に
入り浸って授業をさぼってた俺を呼び
戻してただろう!」
(学生....屋上....もしかして....)
「田中か!」俺は目を見開く
そいつは思い出したかみたいな嬉しそうな
顔でニカッと歯を見せて笑った。
そうこいつの名前は田中 学生時代
喧嘩にばかり明け暮れていた不良だった
そんなこいつをいつも見つけて授業を
さぼらせまいと呼び戻していたのが
俺だった。
田中は俺を護送中にも関わらず
俺に気安く話し掛け
「あの時お前だけが俺の事をうぜえ位に
気に掛けてくれただろう....
あの時のお前があって今の俺があるんだ
だからありがとうな!!
なぁ何があったか知らないけどちゃんと罪を償って刑務所からお前が出られたら
どっかの古びた居酒屋に飲みに行こうぜ
待ってるからな!」
そんな今は俺を咎める側に立って居る田中が気軽に同級生を飲みに誘うテンションで
言うから 思わず俺は涙が出た。
「うん!」と俺は頷いて
田中と約束したのだった。