胸が高鳴るの続き
好きじゃないのに
これはハイネがまだ自分の気持ちに蓋をして認めていなかった頃の話
その頃のハイネはシズクの事を苛めては
何とか遠ざけ様としていた。
シズクの髪の毛を引っ張ったり
怖い話をして暗い路地裏に引っ張って
行ったり
シズクが怖がるグロテスクな虫の死骸を
見せたり下らない事ばかりしてシズクを
泣かせていた。
いや正確に言うならそれは今もだが....
当時は事あるごとに泣かせていた。
その度に....
「っ....うっわああーん....ハイネ....き...らいっ....」泣かれるたびに嫌いと言われる事も増えてそれでもちょっかいを掛ける事を
止めないハイネ
終いには何をしても怖がるシズクに
面白さすら感じてしまい笑いが
こみ上げて来て仕方なかった
シズクを苛めてる時は あのミーナやナイトに指摘された苦しい胸の高鳴りも
忘れる事が出来てむしろハイネにとっては
痛快だった。
やはり二人が指摘した恋心云々など
間違いだった
俺がそんな寒気がして じんましんが出来そうな物 抱くはずがなかった。
むしろ今の方が心地良いし胸の中が
スカッとする。
こんなびくびくおどおどして色気も何も
無い女なんか好きになるわけない
むしろ俺が最も嫌いなタイプだ。
あの高鳴りだってきっとこいつの事が
嫌いだからイライラしていただけだ....
そう結論づけハイネは泣いている
シズクを見て爆笑していた。
それを見ていたミーナに後頭部を
殴られ 怖い笑顔でナイトに注意されるまでハイネの爆笑は収まらなかった。
そうハイネが自分の気持ちを決定づけた
ある日....
ハイネが単独行動をして魂狩りをしていた
帰り道
人混みの中にシズクを見つけた
小柄なシズクは人混みの中の集団にぶつかり尻餅を付いていた。
しかもぶつかった集団は明らかにガラの
悪い集団で....
(何やってんだあいつ相変わらずトロイ)
ハイネは最初呆れた様に見ていたが....
何だかぶつかった集団に体良く絡まれて居た。
これでぶつかったのがミーナやナイトだったらあんな事をされたら強気に言い返して
追い返すか 上手く流していただろう
別に少し位 怪我したってあいつには
治癒術があるんだし....
集団とは言えこの道は治安は悪くないし
誰かが助けに入るだろうとそのまま
気付かなかった事にして道を変えようかと
思っていた時.... ふとシズクの泣き顔が
視界に入った。
それを見たハイネは....
「ご.....ごめん....なさい....」シズクは
精一杯謝っていた。
チームの皆に喜んでもらおうと馴染みの
お店でお茶の茶葉と コーヒー豆を
買って帰ろうとしていた時
運悪く大きな体の人達にぶつかってしまった。
必死に謝っても何だかニヤニヤと笑うだけで中々離してくれなかった。
シズクにはそれが怖かった
涙目で謝って訴えても笑いが増長するばかりでシズクはどうすれば良いか
分からなかった。
おどおどしていると集団の一人の男の人が
シズクの顎に指を掛けて持ち上げて来た
顔が近づいて来てシズクの耳元で何か
言っているがシズクは怖くて聞き取れない
シズクは涙を目に溜めながら目を瞑った
その時 ガキンと金属がぶつかる様な音が
した。
シズクが目を開けると鎌がコンクリートの
地面に突き刺さっていた。
シズクに近づいていた男は尻餅を突きながら後退し仲間と共に蜘蛛の子を散らす様に
逃げて行った。
シズクが目を丸くして現れた人影に
視線を向けると....「ハイネ....」とシズクは
呟く
名前を呼ばれ振り返ったハイネが
不機嫌そうな顔をシズクに向ける。
泣き顔を自分に向けるシズクに一瞬視線を
転じるとふいっとまた視線を逸らし
そうして自分でも思っても見ない言葉が
口から無意識にでていた。
「俺以外の奴に泣かされてんじゃねぇよ」
その口から出た呟きに自分で驚き
思わず口を片手で塞ぐ
ハイネの後ろ姿しか見えないシズクは
ハイネの呟きが聞き取れず首を傾げた。
「ハイネ....」とシズクが呼びかけるが
ハイネは「うるせーっ!」と言って
シズクを置いて全力疾走して走って行って
しまう
シズクはそんなハイネの後ろ姿を目を瞬かせて見つめる事しかできなかった。
ハイネは全力疾走で自宅に戻り
決定づけた自分の気持ちがふたたび再燃している事に気付く
あんな女好きじゃないのにそう決定づけた
はずなのに....
そうしてハイネが自問自答してふたたび
自分の気持ちを決定づけるのはこの
数時間後である。....。
ところにより雨
「今日の天気は 晴れ時々ところにより雨
でしょう」天気予報から流れるそんな予報を聞き一応 折りたたみ傘を鞄に入れて
おいた。
予報は見事に当たり途中から雨が
ぽつり ぽつりと降って来た。
僕は傘を持って来た事に安堵して
これ以上雨脚が強くなる前に
家路へと急いだ。
特別な存在
「レディ&ジェントルマン お集まりの
紳士淑女の皆さん今宵はこの私のステージに足を運んで下さりありがとうございます。」私は腕を胸に当て深々とお辞儀を
する。
「さて今宵見せますステージは観客席の
皆様の協力が必要です。
今からステージの協力者をランダムで
選びたいと思います。」
そうしてステージのスポットライトが
前列 真ん中 後列 2階席と順々に
光って行く。
そうして いきなりバッとライトの光が
一点に集中する様に光った。
そうして光の中に一人の男性が目を白黒させながら 何が起こったか分からない感じで周りを見ていた。
私はステージの上から即座に大きな拍手を
する。
そうして大げさな程 声を大きくし
身振り手振りを激しくした。
「おめでとうございます 貴方は選ばれた
特別な存在です。
どうぞステージの方へお越し下さい!」
私の拍手につられる様に観客からも
大きな拍手が鳴り響く
選ばれた男性は、最初はおっかなびっくりと ステージに上がってからは誇らし気に
笑みを見せて観客の拍手に応える
私はそれを見て小さく笑みを浮かべる
さあて本番は此処からだ
私の役目は如何にして彼を輝かせるかに
思考がシフトする。
彼に特別感を与えたからには此処からは
彼のステージだ。
協力者など名ばかりの口実に過ぎない
今からは彼が主役
私が彼のサポート役だ
さあ 観客を彼の魅力に引き寄せる
イリュージョンを開始しよう。
バカみたい
教室の自分の席で頬杖を突きながら
俯瞰した視点で教室内を眺める
バカみたいにふざけ合って
バカみたいに他愛も無いお喋りをして
バカみたいに笑い合うそんな光景を
バカみたいに一人眺めて心の中で羨ましい
と思っている自分が一番バカみたいな
存在なのに.....
今日も今日とて ぼっちを気にして無い振りをしてバカみたいに一匹狼を気取る
そんなバカみたいな自分が一番バカみたいだ。....。
二人ぼっち
荒廃したこの世界で君と二人だけの世界
二人ぼっちの世界
一つ良い事があるとすれば一人ぼっちでは
無い世界だと言う事 一人きりでは無い
世界だと言う事
君と二人でこの世界を回り
君と二人で食事を取り
君と二人でお風呂に入り
君と二人で就寝する
この世界でたった二人きり
でも君が居ればどんなに寂しくがらんどうの世界でも 私は生きて行ける
君もそうだったら良いなあと願いながら
今日も貴方と私二人だけの日常が
始まる。....。