「また覗いてるの?」
その声に、俺は、顔を上げる。
「何だお前か...」
胡座をかき膝に左肘を乗せ頬杖を突きながら、俺は、面倒くささを隠しもせずに
俺の正面に、愉しそうに立つそいつを見上げる。
「今日は、何が見えるの?」
そいつは、嬉しそうに俺の隣に座り尋ねる。
俺は、そいつの声を耳だけで受け止め
視線は、下に向けたままむすっと
唇を歪める。
そいつは、俺の返事など、どうでも良いように視線を同じように下に向ける。
そこには、波紋を広げて鏡の様に水面が
光っていた。
その水面下を見ると.....
幸せそうに笑って、手を繋いでいる人間が
見えた。
人間の女性の左手の薬指には、キラキラと
輝いている石が嵌まっていた。
たぶん......人間がよくやる
(病める時も健やかなる時も、永遠に愛する事を誓いますか?) なんて
陳腐で気障な言葉を宣う
お決まりの儀式に使う道具か・・・・
「幸せそうだね・・・」
ふいに俺の隣に座るそいつがにこやかな笑顔を俺に向けて言った。
「フン・・・馬鹿馬鹿しい」
俺は、人間が永遠なんて言葉を使う
例の儀式が大っ嫌いだったのでそっぽを
向いた。
そう、永遠なんて 退屈で苦痛なだけだ。
「でも・・・ 羨ましいんでしょう?」
そいつは、悪戯っぽい笑みを向けて
クスクスと笑う。
俺は、虫の居所が悪くなり、立ち上がる。
「もう・・・行くぞ!!」
怒り混じりの声を出し俺は、踵を返す。
「はいはい・・・」そいつは、苦笑しながら俺の後に付いていく。
そう・・・・永遠なんて─
理想郷
晴れ渡った空.白い雲
賑やかな喧噪.舗装されたタイルをなぞる様に其処此処にいろんな商品を売る市場が
広がっていた。
「お兄ちゃん、早く早く!!」
瞳をキラキラさせて今にも駆け出さんと
足を一歩前に出して後ろを振り返り呼ぶ
三つ編みの少女と
「そんなに急がなくても、別に無くなったりしないよ!」
そんな少女を嗜める様に、ため息を吐きながら、冷静に返す少年
市場の露台には、装飾品.化粧品.食品など
多種多様な物が並んでいる。
妹は、拳をギュッと握りどんな掘り出し物に出逢えるかワクワクしていた。
兄は、そんな妹を見つめ苦笑し、
手を差し出した。
「行こう!」
兄と妹は、手を繋ぎ一気に駆け出した
少年の名前は、ユート
少女の名前はピア
今からこの兄妹の宝探しが始まる。