#3 神様が舞い降りてきて、こう言った
神様が舞い降りてきて、こう言った。
『君に神様になってほしい』と。
昔から断れない性格の私は、二つ返事で了承した。
だけど、後悔はしてない。
だって神様は何もしなくていいみたい。
ただ人間界を眺めて、見守ってるだけでいいんだって。
こんな楽なことないよね。
仕事もしなくていいし。
面倒な人間関係に悩む必要も無い。
あぁ、神様になって良かった。
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神様になって何年経ったか。
100年?
もしかしたら1000年いってるかも。
神様というのは退屈だ。
何もしなくていい、じゃなくて、することが何も無い。
ゲームも、漫画も、テレビも、何も無い。
ただ人間界を眺めて、見守るだけの日々。
お腹も空かなければ、眠気もこない。
ずっと起きて、雲の下の小さな生き物を見続ける。
もう嫌だ、こんな生活やめたい。
あぁ、そうだ、かわりの神様を連れてこよう。
そうしたら、私が神様をしなくてもすむ。
誰かいないかな、誰か。
気が弱そうで、断れなさそうな人。
あ、いた。
私は人間の前に舞い降りて、こう言った。
『君に神様になってほしい』と。
#2 誰かのためになるならば
誰かのためになるならば
君はそう言って笑うだろう
誰かのためになるならば
その細い首に躊躇いもなく銀色を突き刺すだろう
誰かのためになるならば
今際の際とは思えない眩しい笑みを浮かべるだろう
誰かのためになるならば
弱い者のために強い者に立ち向かうその背中
誰かのためになるならば
その背中を見て笑顔を零す者がいる
誰かのためになるならば
笑顔の中に1人だけ泣いてる私がいることを
誰かのためになるならば
貴方はきっと気づかない
#1 鳥かご
目の前に広がる広い世界。
黒い太い線で切り離されているそれは、小さな部屋で過ごしていた私には想像も出来なかったくらい、広く、明るく、うるさい。
私の前を通る人は皆、可愛いって笑う。
時々目の前まで来て少し悩んでから帰る人もいる。
今目の前にいる人も、その人達と同じなのだろうか。
彼は、今まで私を見てきた人達よりもずっと長く見つめて、たった一言、こう言った。
『こんな狭い鳥かごに入れられて、可哀想。』
そう言って帰っていく猫背な背中を、私は不思議に思いながら眺める。
可哀想、とは、一体どういう意味だろうか。
だって私は、今こんなに幸せ。
広い世界を見渡すことが出来るし
天敵に襲われる心配もない。
ご飯もしっかり食べられて、寿命や病気以外で死ぬことなんてほとんどない。
これ以上の幸せなんてあるの?
私からすれば、こんなどこまで続いているかも分からない大きな世界で、どこから襲われるかビクビクしながら生きている貴方の方がよっぽど
可哀想。