忘れたくても忘れられない
やっぱりあの顔かな
あっ この娘、そうなんだ。
やられちゃったんだ・・・
って私を観た彼女の顔かな。
あの顔は
同情だったか
憐れみだったか
好奇心だったか
侮蔑だったか
全部混じったあの顔は
私の心を壊してさ
封印している記憶の中で
面白そうに
私をみてる。
私は彼女になり
彼女がわたしになり
私を離してくれないの。
静寂に包まれた部屋
あなたと時間を過ごせる時
私は落ち着いて
静かに静かにその部屋にいる
心も頭も
すうっと透明な静かさで。
私が私となって
私であってあなたと、在る。
ひとたびあなたの姿がなくなれば
まずそわそわと世界が崩れ
そしてついには半狂乱となり
あなたを探しに
私は朽ちて壊れていく
そんな静寂に包まれた部屋を
あなたは私にくれるのに
私があなたにあげられるのは
燃え盛る様な
我儘で独占的な
自己愛に満ちた
歪んでしまった愛なんだ
「ごめんね」
静寂な部屋に
私の声が
静かに響いた
声がきこえる
あの人の声が
私をちゃんづけで呼んだ
あの人の
私の名前を呼ぶ声が。
呼んで呼んで
私を呼んで。
もっともっと私を呼んで
お願いだから
行かないで
私の想い出にならないで。
目を閉じると
あの人の笑顔と
私を呼ぶ声と
苦しい時間と
愛しい時間と
後悔と悲しみと
狂おしい程の欲望と。
呼んで呼んで
私を呼んで
ずっと私を探し続けて。
声がきこえる
私はずっと
夢の中にいる
夢の中で生きていられる
秋恋
秋の恋だった
それは。
紅葉が色づく様に。
私は頬を染め
彼の羽織り物をかけてもらい
涼やかな虫の音を聞き
夏が終わってしまったね。と
幸せな気持ちでなげいてみせた
可愛らしいドングリが
ころころころころ落ちてきて
1つ拾ってみたりした
あれだけ沢山落ちていたドングリが
いつの間にかなくなって
数少ないドングリも
車に轢かれて割れている
私とおんなじだ
私の心とおんなじ様に。
秋の恋はそうして終わった
秋の恋だった。
あれは。
ただそれだけの事だった。
大事にしたい
優しい言葉
明るい眼差し
柔らかい態度
落ち着いた所作
余裕のある心
芯のある自分
静かな時間
全ての許し
存在そのものの感謝
そしてそうでない自分
そして
それも
穏やかに
受け止める
蒼く深い海の様な
何もかも包み込む
言葉を持たない
あたたかい何か。
大事にしたい
大事にする
大事にされている
きっと
わたしも あなたも だれもが。