よく緑色の服や小物を身につける。いつからだろうと思い返すと、高校時代に遡る。
当時、進路に悩み、人間関係に悩みと、鬱々とした学生生活を送っていた。やりたいことも特にない、何か漠然とした焦りと不安はありつつ、何も行動に移せてなかった。
そんな折、あまり話したことない同級生が鮮やかな緑のコートを着てきた。鮮やかすぎて、学校という場では少し、いやだいぶ浮くような、そんな色合いだった。
当時、勇気を出してその子に話しかけたことを思い出す。会話の中身はあまり覚えていないが、「緑が好きだから」とはっきり答えてくれた部分は覚えていて、その臆することのない態度をとても羨ましく思った。
私も自分の好きなものを見つけて、だれがなんと言おうが、単純に、「好きだから」と言えたら。
そんなことをずっと、考えていたら自然と緑色の物が増えていった。
あの頃憧れたあの子は今頃どうしてるかな?
そして、私は今、好きなものを好きだと言えてるかな。
あなたがいたからこの世に生まれて来れた。
あなたの笑顔が見たくて、勉強を頑張れた。
あなたがいたから、喪うかなしみを知って心の痛みを知れた。もういないあなたへ。いつか一緒にビールを飲みながら、笑いながら私は生まれてきてよかったよ、ありがとうと伝えれたら。
1人で泣いていた。
外は土砂降りで、何も見えない。
ああ、傘を差し掛けてくれたあなた。
今度は、相合傘、一緒に歩いて行けたら。
いつの間にか、雨は止んで、空には虹がかかっていた。
眠りに落ちるとき、暗闇に吸い込まれ落下していく感覚がたまにある。その先には暗いトンネルがあって、先に広い森がある。その森の広場らしき中心部分にぽつんと椅子が置いてあった。なにげなく座ってみたら椅子が動き出した。気づくとスーツ姿の初老の男の人が立っていて、「これはあなたの人生です」と側で呟いていた。そんな夢を、見た。あの男の人は、きっと、誰の中にもいるんだと、思った。そして、私たち自身の人生をじっと、見ている。