遥か遠くまで見渡せる海のような湖の湖面に
一人静かに佇む少女
その足は僅かに水面に触れていて…
彼女はじっと耳を澄まし
いつか訪れる機会を待ち望みながら
憂を帯びた表情で遠くを見つめている
ポチャン と水の跳ねる音
魚が跳ねたらしい
たったそれだけのことが
いかにも重大なことのように感じる
この不思議な空間に 僕もいたんだ
そう… 僕も居たんだ…
僕は君のナイトだ
嵐が来ようと槍が降ろうと
君を必ず護るのが僕の使命だ
だけど君はそれを望まない
隣に並んで和やかに過ごす時間を好む
僕はどうしたらいいのかわからず
いつも困った笑みを浮かべてしまう
平穏と戦争と…
生と死と…
生きた時間の長さが短さが
僕が戸惑う理由なのか
あゝ 同じ景色が見られたら良いのに
わたがし片手に
嬉しそうに人混みを抜けていく君
僕はそんな君を見失わないように追いかける
気付けばりんご飴の店の前
両手に花(?)を持った君ははにかんで笑う
僕も大きいのをひとつ買って
りんご飴で乾杯!
デートかどうかも怪しいけれど
君の笑顔を見れただけで全部許せる
簡単で幸せな僕の話
こんばんは、今宵は月が綺麗ですね
神様は、想像していたよりも若く
端正な顔立ちの青年だった
鈴虫の声とススキの重なり合う音が
静かな秋の訪れを告げる
…そうですね
そう答えた私は
彼の隣に並び
同じ月を 同じ景色を眺めていた
かごの中の鳥は
外の世界をずっと見ていました
どんな時もただただ見ていました
雨の日も大風の日も雷の日も
ただ静かに見ていました
ある日、鳥かごの入り口が開いていました
鳥は一歩、一歩と外の世界へ歩いていきます
その時 ふと 自分に羽根があったことを思い出しました
記憶の限りを尽くして はばたいてみました
ふわりと、体は宙に浮き、どこへでも
行きたいところに飛んで行けるのです
無我夢中で大空へと飛び立っていった一羽の鳥は、
雲の向こうへと優雅に消えていきました