みみ

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1/28/2024, 1:35:50 PM

【街へ】

都会と言うには何も無いただゴチャついたこの街
背の高いビルに囲まれ、この狭い路地は日に照らされない。

「ここは、架空の街」


俺はそう思っている
誰かに言えば気持ち悪がられるだろうけど、なにかおかしいんだよこの街
最初は、都会のCDショップを目指して歩いている時に、たまたま通っただけのこの街。
散歩がてらいつもとは違う、遠回りの道を歩き、出た先にあったのは、違和感のある古ぼけた商店街だった。
この商店街に着くまでの道には特に目立つ店なんかは無かった。テナント募集中やなんの会社かも分からない年季の入ったビルが並び、まともに買い物できそうな店など見なかった。

「それにしたって、この人混みはなんだよ」俺は呆気に取られていた。何故ならば、この商店街の近くに来るまで人なんて見かけない程静かな街だと思っていたのに、商店街は沢山の人でごった返していたのだ。

今の時代商店街なんて、スカスカな所が多くどんどん店が潰れているこの時代に、昭和の資料写真で見るような活気の溢れた商店街だった。「商店街を突っ切って行こう。」この街は買い物が出来る店がここら辺くらいしかないのか?
それぞれの店の店主が大声で品物を客に売り込む。一見なんてことの無い普通の店が並ぶ。人混みの中足を進め、何軒か店の前を通り過ぎ目に付いたのは、なんて事ない季節の果物が沢山並べらてた八百屋だった。

たまたま視界に入った、籠に積み上げられたリンゴに何か、強い違和感を感じた。
13個程積まれたリンゴをよく見てみると、ひとつのリンゴがくり抜かれたように丸く空洞が出来ていて、何か
折り畳まれた紙が入っていた。店の商品が何故こんな風になってるんだ、少し気持ち悪いイタズラだと思いながらも紙が気になりリンゴの穴に指を突っ込み果汁で湿った紙を取りだした。

『こんな街は存在しない
違和感だらけだろ』

小さな紙に書きなぐられた、この意味のわからない言葉はますます俺を気持ち悪くさせた。「違和感だらけも何も、このリンゴが1番の違和感だろ。」ともかく定員さんにこのリンゴを渡そうかと、店内を見渡すがそれらしき人は居ない。さっきまでエプロンを身につけた女性がいた気がするが居ない。
仕方ないからこの奇妙なリンゴと紙を定員さんがすぐに見つけられるようにと、目立つ位置に置き、また歩き出そうとしたところで、お爺さんが俺の隣で止まりリンゴを見た。

俺が説明しておこうかと口を開きかけた時に、お爺さんは、紙をリンゴから取り出し開く
文字を見たであろうお爺さんが俺を睨んだ。

[お前か?これを書いたのは]

「いや!俺じゃなくて」

[じゃあ誰だこんなことを書いたのは、俺たちは普通にこの街で暮らし続けたいだけなのに、余計な事を]

そう言うとお爺さんは紙をポケットに突っ込み歩き出して行ってしまった。
何を言っているのかよく分からず立ち尽くしていたが、ここにいても仕方ないから取り敢えず目的のCDショップを目指してまた歩く事にした。

あの紙はなんだったんだろう、お爺さんの様子からして、ただのイタズラでは無いような。
存在していないと書かれていたこの街の違和感が気になり、俺はまたこの街へ来るだろう。

1/27/2024, 12:00:14 PM

【優しさ】

優しげな貴方が私は、大っ嫌いだった。
何時も私たちから一線引いたような態度で大人っぽい貴方は、今思えば精神的に私たちよりもずっと大人だったのだと思う。

すぐ感情的になり、友達同士分裂して派閥争いのような子じみた私たちに嫌悪感があったんでしょ
私たちが悪口を言い始めたらその場を離れ、私たちともあの子たちとも仲良くする立ち回りの上手い、どっちつかずな貴方に何時もイライラしてた。
だから貴方のことを皆に悪く言った。
皆は口を揃えて「確かにあの子そうだよね」と共感し始めた皆、貴方に冷たく接するようになった。

あの頃からもう7年近くすぎ、私も大人になった。
あの頃気に食わなかった貴方のことを考える事がたまにある、貴方は誰にでもいい顔していた訳じゃなかった。
派閥を作り、争っていた私たちに囲まれ、貴方は相当生きずらかったと思う。
それなのに、私たちと楽しい時を過ごそうとしてくれていた貴方の優しさを私は最悪な言動で無下にした。

もう会えることは無いとは思うけど、もう後悔しても遅いけど

貴方と友達になりたいと自分勝手に思ってしまう。

12/7/2023, 8:17:30 AM

【逆さま】

皆が走って、ボールを投げて転ぶ校庭の片隅で

僕は
鉄棒で逆さまになっていた。

まさき君が蹴ったサッカーボールが空に向かって落ちていく。
それを見た僕は、いま鉄棒にかけているこの足を離せば、そのまま空に落ちて行ってしまうのだろうかと怖くなった。
何処まで落ちるんだろう、ビルよりも雲よりも下へ宇宙より下はあるのかな
僕は鉄棒にしがみついてゆっくりと元に戻って地面に足をそっとつけ手を離し立つ
『ねえ!僕もサッカーまぜてぇー!』
僕もボールを空に向かって高く高く蹴りあげたくなった。

11/19/2023, 6:44:10 PM

「キャンドル」

娘の誕生日ケーキの上に刺さる“6”のキャンドル

普段キャンドルなんて使わないから今日のためにマッチをひと箱買った。
たったひとつの数字のためのマッチ1本
残りのマッチはどうしようか、使い道なんてないけどこのまましけってしまってはもったいない。

燃やしたいものを家中からかき集め全て燃やして何も無かったことにしてしまおうか
1度も花が咲かずに枯れた苗、なんの思い出も詰まっていない学生時代のアルバム、この家から出ていった男のネクタイ、知らない口紅、娘のお気に入りのぬいぐるみ、黄ばんだボロボロの壁。
要らないものを集めていたら手が止まらなくなっちゃった。もう何もかもが要らないもう全部無くしてしまいたい
よく考えもせずマッチ棒を箱に擦り付けゴミの山に投げつける、瞬く間に物から物へ火が燃え移るのを私はぼーっとただただ見ていた広がる火に娘が気づき怯え泣くものだから力いっぱい抱きしめ離さない。絶対に離さない。
私はこのまま全て終わらせた。