みみ

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【街へ】

都会と言うには何も無いただゴチャついたこの街
背の高いビルに囲まれ、この狭い路地は日に照らされない。

「ここは、架空の街」


俺はそう思っている
誰かに言えば気持ち悪がられるだろうけど、なにかおかしいんだよこの街
最初は、都会のCDショップを目指して歩いている時に、たまたま通っただけのこの街。
散歩がてらいつもとは違う、遠回りの道を歩き、出た先にあったのは、違和感のある古ぼけた商店街だった。
この商店街に着くまでの道には特に目立つ店なんかは無かった。テナント募集中やなんの会社かも分からない年季の入ったビルが並び、まともに買い物できそうな店など見なかった。

「それにしたって、この人混みはなんだよ」俺は呆気に取られていた。何故ならば、この商店街の近くに来るまで人なんて見かけない程静かな街だと思っていたのに、商店街は沢山の人でごった返していたのだ。

今の時代商店街なんて、スカスカな所が多くどんどん店が潰れているこの時代に、昭和の資料写真で見るような活気の溢れた商店街だった。「商店街を突っ切って行こう。」この街は買い物が出来る店がここら辺くらいしかないのか?
それぞれの店の店主が大声で品物を客に売り込む。一見なんてことの無い普通の店が並ぶ。人混みの中足を進め、何軒か店の前を通り過ぎ目に付いたのは、なんて事ない季節の果物が沢山並べらてた八百屋だった。

たまたま視界に入った、籠に積み上げられたリンゴに何か、強い違和感を感じた。
13個程積まれたリンゴをよく見てみると、ひとつのリンゴがくり抜かれたように丸く空洞が出来ていて、何か
折り畳まれた紙が入っていた。店の商品が何故こんな風になってるんだ、少し気持ち悪いイタズラだと思いながらも紙が気になりリンゴの穴に指を突っ込み果汁で湿った紙を取りだした。

『こんな街は存在しない
違和感だらけだろ』

小さな紙に書きなぐられた、この意味のわからない言葉はますます俺を気持ち悪くさせた。「違和感だらけも何も、このリンゴが1番の違和感だろ。」ともかく定員さんにこのリンゴを渡そうかと、店内を見渡すがそれらしき人は居ない。さっきまでエプロンを身につけた女性がいた気がするが居ない。
仕方ないからこの奇妙なリンゴと紙を定員さんがすぐに見つけられるようにと、目立つ位置に置き、また歩き出そうとしたところで、お爺さんが俺の隣で止まりリンゴを見た。

俺が説明しておこうかと口を開きかけた時に、お爺さんは、紙をリンゴから取り出し開く
文字を見たであろうお爺さんが俺を睨んだ。

[お前か?これを書いたのは]

「いや!俺じゃなくて」

[じゃあ誰だこんなことを書いたのは、俺たちは普通にこの街で暮らし続けたいだけなのに、余計な事を]

そう言うとお爺さんは紙をポケットに突っ込み歩き出して行ってしまった。
何を言っているのかよく分からず立ち尽くしていたが、ここにいても仕方ないから取り敢えず目的のCDショップを目指してまた歩く事にした。

あの紙はなんだったんだろう、お爺さんの様子からして、ただのイタズラでは無いような。
存在していないと書かれていたこの街の違和感が気になり、俺はまたこの街へ来るだろう。

1/28/2024, 1:35:50 PM