言葉にできない
秘密をなんでもないことみたいに言うと秘密にはならない、というのをきいたことがある。それから私はたくさんのことを言葉にしてきた。可愛いも、好きも、嫌いも、美しいも、醜いも。全てなんでもないことのように伝えてきた。
そんな私が言葉にできないのは、あなたみたいな人のこと。あなたのことは嫌い。ガサツで声が大きくて、頭が悪いから話についていけない。その癖、自分の好きなことは意気揚々と長時間話す。あなたがきらい。でも私は今日もあなたに話しかけて、嫌いと口にする。あなたは今日も呆れたように笑う。きらいなあなたに近づく私の背後にある感情を私は今日も言葉にできない。
春爛漫
自信に満ち溢れているのがあなただと思っていた。あなたは人気者で、たくさん明るく話す人で、どんな時でも明るかった。
ある時、あなたと話す中で意見がぶつかって、私がつらい過去を思い出し、取り乱してしまうことがあった。あなたも珍しく取り乱して、自分の過去の話を持ち出して、自分も同じ経験があると早口で口走った。
私はそのとき、あなたの優しさの混乱を感じ、咲き乱れる花の下には枯れた花が敷き詰められているのを知った。
大切なもの
私はそれをいつも忘れてしまう。そして私はそれを容易になかったことにできる。
どんなに美しかったものでも、どんなに優しかったものであっても、失う事に多少戸惑っても最後にはなかったことにしていた。
その美しさや優しさの破片が少し頬をかすめることがあっても、私はまた大切なものを探しに行くことができる
幸せに
たくさん描きたい絵を描いて、たくさん暖かい布団で寝て、たくさん作りたい料理を作って、たくさん外の世界に触れてください。
あなたが好きなことが邪魔されないで、あなたがやりたいことを認めない人がいない世界で幸せになってください。私がいなくてもいい世界で、永遠に
二人ぼっち
あなたと一緒に布団の中でいるときは二人ぼっち。あなたの呼吸しか聞こえない。あなたの心臓の音しか響かない。
あなたとこうしていないと二人ぼっちになれない。私には世界の音がうるさすぎて、あなたの音しか聞きたくない。その音が聞こえた時、私はこの世界から離れることができる。あなたは体温を私に預けて、私の音を聞いている。二人の輪郭が溶けていく。広い世界で二人の音が静かに沈んでいく。