「secret love」
知ってますか わたしの瞳を
気づけばいつも 追っている
あなたの風に揺れる髪
優雅にひらめくスカートを
わたしは私である為に
あなたと私である為に
私の中でわたしを殺す
けれども決して果たされず
わたしは何度も生き返る
あなたの笑顔を見る度に
だからせめて
どうかこのまま
あなたはわたしに気がつかないで
ただの私を見ていてください
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ぱらり ぺらり
ぱらぱらぱら ぺら ぺら
ぽと
ひょい ぽんぽん
じろじろじろじろじろじろ
どさ
じろじろじろじろじろじろじろじろじろじろ
……
すっ すたすた
きぃーばたん
「ふたり」
穴が空く
私の中に ぽっかりと
穴が空く
あなたの形を かたどって
穴が空く
永遠なんて ないことを
穴が空く
私は十分 知りました
穴が空く
ひとりぼっちで ここにいて
穴が空く
あなたもそうして いるのでしょう
穴が空く
穴が空いています
穴が空く
代わりに何かで 埋めながら
穴が空く
歪な形の 穴が空く
「心の中の風景は」
まぶたを閉じましょう
何が見えますか?
私には何も見えません
本当に?
いえ、草原が見えてきました
それは良かった どんな色ですか?
澄み切った水色と生命溢れる緑色
本当に?
いえ、青く暗い色です 星がちらついて
そうですか どんな空気をしてますか?
心地よい風が吹き
本当に?
いえ、湿った空気が纏わりついています
そうなんですね
ええ
ではまぶたを開けて
何が見えますか?
私には何も見えません
見えません
あなたの声も聞こえません
私の中には何もありません
「夏草」
かき分けどもかき分けども青さはやまない
この先で眠る人へ会う為に
一心不乱に進んでゆく
「本当にここなのかしら」
そんな疑問は無視してやろう
私は合っている 絶対に 多分
もう少し、もう少しだけ進んだら
一旦休憩しようかな
そして記憶の糸を手繰り寄せ……
ああ! やはり不安なのだ
誰にも聞けやしないのに
私だけが頼りなのに
どうして人は忘れてしまうのか
今はまだ記憶にある感触も
いずれは失うのだろう
大きな空洞
不意にぽっかりと心に開く
やけに太陽が眩しくて
何も見えないまま私は進む
そのうち風が変わってくれば
あなたにもうすぐ会えるでしょう