いす゛み

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11/21/2024, 10:50:25 AM

 ……雀の鳴き声。暖かい毛布に、上手く開かない瞼。
 いつもと変わらない朝、そう、変わらない毎日のスタート。
 期末テスト当日でなかったら、いつも通りの幸福な1日になっただろう。

………あれ?

聴き馴染みのない主婦の声。

私は慌ててスマホを開く。

11/18/2024, 10:14:06 AM

悲しいね。寂しいね。楽しかったよ。
あれ、嬉しかったよ。格好よかったよ。

辛い言葉は進行形で語りかけられ
幸福な言葉は過去形で語りかけられる。

新たな思い出とは、もう出会わない
「バイバイ、お爺ちゃん」
覗き窓が静かに閉まる

11/17/2024, 10:31:05 AM

 ぺら…‥ぺら…‥ぺら。‥すんっ、ふぅー。
 灰色で、静かなバス停。彼女の呼吸音だけを聴きたい。
「はぁーっ」 目の前が白くぼやける。
「ね、手止まってる」
 いつまにか目線が僕に向いている。
「ごめん」
同じ大学に行こうと言った。今年の8月のこと
 ぺら……‥ぺら……
彼女の手が、また単語帳を捲る。
 パラララッ…
落書きだらけのノートを開く。
「冬になったら、ラストスパートだね」
返事はしない。
 約束なんてしなければよかった。

11/16/2024, 11:05:25 AM

「たーくん、バナナあるよ、食べる?」
「……」
 彼はぶっきらぼうに一房の内の1本を指差した。
 やっぱり怒ってるのかな?でも、そんな姿も今や癒しだ。
「あ、知ってる?こっちの黒いのの方が……」
 選ばれた物とは別の物を手に取って見せる。
「ねぇ、パパは?」
「……」
 シミだらけでくすんだ頬を撫でる。
「黒いのの方が…甘くて美味しいんだよ‥」

11/16/2024, 5:58:16 AM

「やい、何処へ行かれるか」
 妻に先立たれてから、見境なく話し掛けるようになってしまった。いや、"なれた"と言う方が正しいだろうか。
「ふふ……あなた、人見知りは治ったの?」
「おや、君のは、まだみたいだね」
 小さな体は、塀の上を軽やかに歩き去っていく。
「1人で大丈夫かい?まだ、そんなに小さいじゃないか」
「元は大人よ?」
 彼女は腕の代わりに短かな尾を振った。
丸い腰に白い毛に性格、生前の妻そのままだ。
 猫は一生に一度だけ喋れると言うが
「…まだ心配性は治ってないみたいだね」

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