【街の灯り】
いつものように帰路につく。ふと、空でも見ながら帰ってみようと思い立った。晴れているし、昨日は七夕だった。綺麗な星が見えるだろう。ここ最近は忙しかったり落ち込んだりで前や下ばかり向いていたからいっとう綺麗に。
パッと上を見上げると漆黒の空に輝いているであろう星は街の灯りに負けていた。光で霞んではっきりとは見えない。途端に落ち込んだがいい香りが鼻腔をくすぐる。カレーや唐揚げ、ラーメンの香り。刺激されたのかお腹が鳴る。
「今日はカレーを食べて帰ろう」
少し急ぎ足で家の近くにあるカレー専門の店へ向かう。値段が少し張るが気にしない、疲れているし欲求には勝てないのだ。
「星は見れなかったけど街の灯りも悪くないな」
何を食べようか考えながら街の灯りを頼りに歩いた。
【七夕】
雲ひとつない晴天。夜だからか少し肌寒い風が吹く。
「星...綺麗だね」
「うん、今日晴れて良かったよ」
外に出るのが難しい君と久々に行った買い物。
デパートもスーパーもあらゆる場所で鮮やかな緑が揺れていた。
葉先にはカラフルな紙が結んであって、みんなの目標や願い事が書かれている。
『ずっと一緒にいたい』
行く場所全てでにこにこしながらペンを走らせていた君。
(七夕の短冊は七夕に関することや目標を書くものらしい...つまり、願望は叶わない)
日も落ちて暗くなった頃、珍しく一日中元気だった君を病院まで送る。
「あ!短冊!これにも書く!」
パァっと明るい表情になった君。また同じことをかいてどこか寂しげな顔で吊るす。
「願い事...叶うといいね」
そう言って僕は君の余命宣告が書かれた紙をポケットでグシャグシャにした。
【真夜中】
ふと目を覚ます。目に入るのはカーテンから差し込む光ではなく、どこまでも広がる暗闇。
漠然とした恐怖が襲い、闇雲に手を伸ばした。小さな温もりを手に掴み取る。
「...怖い夢でも見た?」宥めるような優しい声に縋るように手を握り、身体を寄せる。
「大丈夫だよ、大丈夫...まだ真夜中だし眠ろう」
寄せた身体を、少し強く握った手を、否定することなく抱き込む。気持ちのいい微睡みに身を預ける。
大好きな君の温もりが、その優しさが欲しくなって...大嫌いな暗闇を探った。たまには真夜中もいいのかもしれない。
【愛があればなんでもできる?】
クリス「愛があるからといって、なんでもできるわけじゃない。現実的に考えるとお金や人脈...場所が必要になることが殆どだ。けれど何かをするための原動力...エンジンとして愛はいいものだと思うよ」