いつかきっと運命の人と巡り会える。
昔はそんなことを思っていた。
だって運命の赤い糸で結ばれているんだから。
どんなに辛いことがあっても、それを支えに頑張ることができた
けれど巡り会えることはなかった。
運命の人はいないないんだと思った。
私は一生死ぬまで一人なんだんだと。
でも違った。
今はもう運命の人が隣りにいる。
きっかけはこのアプリ。
自分の事を入力するとAIが判断して、アプリがあなたにおすすめの人を紹介してくる。
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「うんめいのひとが、きっとみつかる、っと。ふう」
婚活アプリの紹介文の下書きを終えて、ふうと、息をつく。
とりあえずの文章なので、書き直したいところはあるが、後で直すことにしよう。
何事も急いではいけない。
背伸びをするとアプリの企画書が目に入る。
運命の人と出会える、ね。
謳い文句が本物ならば、誰にとってもとって魅力的な言葉だ。
もちろん例外はいる。
それはすでに運命の人に出会った人々である。
私?私はこの仕事が終わったら、出会う予定だ。
私の運命の相手、それは諭吉さんである。
浮気なんてしない。この世で信じられるのは彼だけ。
そういえば、近いうちに栄吉さんになるが、これは浮気になるのだろうか。
いや、両方囲えば問題ないな。
さて、そろそろじゅうぶん休んだから、仕事を続けよう。
未来の運命のあいてのために
「奇跡をもう一度」
周囲の人間が囃し立てる。
現チャンピオンの君とチャレンジャーの僕。
去年、君はチャンピオンである僕を打ち負かした。
そして今年も周りは君が勝つことを望んでいる。
失礼な奴らだと思う。
君が勝ったのは奇跡だと言うんだから。
あの時、君は全力を尽くし、僕も全力を尽くした。
あのときは楽しかった。
一瞬ごとに君は成長し、それを僕が越え、また成長する。
自分の全力を受け止めてくれる相手がいるというのは、幸せなことなんだと思った。
そして君は勝った。
そこに奇跡なんてない。
だってそうだろう。
研鑽を重ねた僕らに奇跡なんて、いい加減なものが入り込む余地なんてない。
君の顔を見ると分かる。
前会ったときからからずっと技を研ぎ澄ましてきたことが。
君の努力がまぐれと言われたことが、悔しかったんだろう。
でも僕も同じだ。
負けたのが悔しくて、ガラでもないのに特訓までしてしまった。
そろそろ試合の時間だ。
さあ、始めよう。
次勝つのは僕だ。
始めよう。
奇跡のようなあの時間をもう一度
黄昏時は幽霊や妖怪に会いやすい時間だという。
それを聞いてからというもの、夕暮れ時はずっと君を探している。
僕たちを置いてむこうに行ってしまった君。
もしかしたら会えるかもしれないという希望を胸に、ずっと探している。
でも君の影すらも見当たらない。
そういえば、君は隠れるのが得意だったね。
僕がどれだけ探しても、見つからない。
そうやって、こちらが諦めた頃に僕を呼ぶんだ。
にゃあ
声のした方を向く。
そこには猫がいた。
今回のかくれんぼも君の勝ちだね。
そう言うと、君は夕日の中へ去っていく。
二本の尻尾をご機嫌に揺らしながら。
きっと明日も今日と同じ
それは避けられない
ある日親に欲しいものを聞かれて、正直に答えた
初めは嬉しかった
二日目も幸せだった
三日目でおかしいと思った
四日目でもう嫌になった
明日で五日目、もういらない
望んだものとはいえ、何日も同じだと嫌になる
これをリクエストしたあの日の自分を殴ってやりたい
ああ神様、もしも願いが叶うなら、
カレー以外のものを食べさせてください
彼は待っていた。
物音ひとつしない、静かな部屋で。
誰か特定の人間を待っているわけではない。
いつ来るかも知らない。
家が立派というわけではない。
ここは打ち捨てられた廃墟である。
それでも、たくさんの人々が彼のもとにやってくるのだ。
彼は一体何者だろうか。
その答えは幽霊である。
それも、どちらかといえば悪霊の類の。
幽霊なんて怖くないと言って、肝だめしにやってくる若者を驚かせていた。
彼は生きている間の頃は覚えていない。
おそらく自殺だったと思う。
しかし幽霊として自我を得た。
これを第二の生と捉え、彼は幽霊としてふさわしい振る舞いをすべきと考えた。
そして、ここにやってきた人間を驚かせていた。
彼は充実していた。
噂が噂を呼び、たくさんの人間がやってきた。
その全員に叫び声を上げさせた。
そしてこれからも、そうするだろう。
彼は遠くで誰かの気配を感じた。
また誰かが肝だめしにやってきたのだ。
彼は待つ。
誰かがこの部屋の来ることを。
彼は静寂に包まれた部屋で待っている。