溢れる気持ち
優しい人間でいたい。
あの子が僕を優しいとそう言ったから。
僕はただ臆病で怖がりでだから死をみたくない。
だから僕は誰であろうと何であろうと命を助ける。
それをみてあの子は馬鹿だなあと笑いながらやっぱりそれは貴方の優しさだよとそういったので。
“人を殺せる”優しさをもつあの子がそう言うのならそうあろうと決めた。
誰であろうと手をとり何であろうと死なせない。
貧富の差も身分の差も関係なく人を救おう。
救世主偽善者?そんなものではない。
僕にとってあの子以外は全て同じなのだから。
だからあの子以外の命は平等に扱う。
あの子の言葉に恥じない人間であるただその為だけに僕は人を生き物を世界を救おう。
この胸にあるのはあの子に捧げる愛ただそれだけ。
【命の重さ】
1000年先も
未来のことなんて想像もできない。
今日も今日とて血と硝煙のにおいが満ちている。
まばたきしたら次の瞬間に死んでいてもおかしくないこの世界では10分後ですら遠い未来だ。
嗚呼でもそうだなそれでもわかることはある。
1000年先も人は争ってるだろうさ。
まぁ絶滅してなきゃだが!
【お伽噺】
勿忘草
勿忘草をもらったことだけを覚えている。
誰がくれたのか相手のことを何も思い出せない。
それでももらった勿忘草はこうして押し花となり未だ手元に残っている。
誰からもらったのだろうか。
できればこんな薄情な人間のことなんて忘れているといい。
名前も姿も何も思い出せない相手へと願った。
【私を忘れないで】
ブランコ
仕事が終わりヨタヨタと歩いて家に帰る。
現在午後9時を過ぎたところ。
出遅れてしまった。
いつもよりも5分ほど出遅れてしまった。
走れば間に合うはず。
そう思い早足で歩く。
目指すは会社から歩いて5分ほどにある公園だ。
周囲に人影なし。
物音もなし。
(これは行ける!!)
残り100メートルを走り公園に飛び込む。
小さな街灯がポツリとあるだけのため薄暗い。
息がきついがそのままの勢いで目当てのものをつかみとる。
勝った!!
息を整えようと深呼吸。
そこに聞こえる慌ただしい足音。
数分後に反対側の入り口から飛び込んできたスーツを着た同年代の男性。
彼は自分の姿を見つけると悔しそうに顔を歪めた。
それをみて笑顔になる。
「今日は僕が勝ちです。」
ちょっとした出来心とストレス発散のためだった。
昇進したが部下も増えて仕事も増えてストレスも増えた。
そんなときに会社から駅へ向かう途中ふと足を止めた。
駅までの途中にある小さな公園。
ブランコと滑り台とシーソーが置いてあった。
仕事終わりに人がいるところを見たことはない。
当たりも川やら畑やらなためとても静かだ。
だからまあ少しばかり童心に帰りブランコに座ってみた。
ギコギコと漕いでみる。
小さい頃はブランコは人気で並ぶのもめんどくさくてあまり遊んだ記憶はない。
ゆっくりと脚を動かす。
だんだん揺れが大きくなりちょっと楽しくなってきた。
いやこれは並ぶなぁ。
楽しいしなんて考えてたら突然横から声がした。
「おい。」
「ふぁっ!?」
はビックリしすぎて変な声がでた。
慌てて両足を着けて揺れを止める。
声のした方を見るとスーツをきた男性が立っていた。
同年代くらいだろうが自分とは違い運動でもしているのか腹はでていない。
これは怒られるやつか?
ブランコに腰かけたまま相手のでかたを伺う。
スーツの人は無表情で口を開く。
「3分。」
「え?」
「3分たったぞ。」
「はぁ。」
「交代してくれ。」
「え???」
これがスーツさんとの出会いであり長きに渡るブランコ争奪戦の始まりであった。
【夜の公園戦争】
旅路の果てに
こんなつもりはなかったのだ。
ただ少しだけ人よりも戦うのが上手かったらしい。
敵を倒して倒して殺して殺して。
そうしていつのまにやら根無し草の旅人が勇者とやらになってしまっていた。
別に地位とか名誉とかそんなものが欲しかったわけでもないのだ。
金は欲しかったがそれだってただ美味しいものをお腹いっぱい食べたかっただけなので。
そんないらないものばかり手に入ってしまい代わりに何よりも愛した自由をなくしてしまった。
未知を見たかった始まりはただそれだけだったのに。
嗚呼全く人生ままならないものだなぁ。