うわ~!もっと右、右! おっとっと!
はぁ~、危なかったぁ~
もうちよっとで、欠伸してる猫さんの口の 中に着地するところだったよ~
あ、こんにちは!
僕はタンポポの綿毛のフワットです
今ちょうど、お気に入りの風をつかまえて、その風にのってここに無事に到着したところです
僕らタンポポの綿毛の運命はまさに風次第
うま~く風を見極めて、タイミング良くエイッ!て風に乗せてもらうことが大事なんだ
その風はどこから来てどこに行きそうか…
どんな匂いか…
どんな色合いか…
それらをよ~く観察して、そして何より僕自身がどこへ行きたいか
もちろん、行き先は風次第なんだけど、すべてを風任せにしていちゃあいけない
自分の意思で自分の運命は切り開く!ていう意気込みが大事なんだよ
たかがタンポポの綿毛だけどね
でもね、僕らにだって志はあるんだよ
フィロ
その男は、ある日突然店にふらっとやって来た
表に貼られた求人広告を見たらしい
「3ヵ月だけ働きたい」と言う
見るからにやる気の無さそうな、掴み所の無さそうな、まるで生気を感じさせない雰囲気が、かえって強烈な個性となって彼を包んでいた
私のポリシーからはおよそかけ離れた彼を、今までの私なら
「ごめんなさ、丁度決まったところなの」
とやんわり断っていただろう
でも、ひょろっと背の高い彼に見下ろされ、その顔の半分は覆っていそうな前髪の奥にある彼のその瞳に強く惹かれるものがあった
色彩をほぼ感じさせない暗い瞳だったが、どこまでも澄み渡るようなその眼差しが私の嘘を見透かしているようで、私は言葉を詰まらせた
次の瞬間頭とは真逆の言葉が口を突いて出た
「今日から働いて」
この瞬間、私と彼との激しい刹那的な恋が始まっていた
フィロ
「生きる」ことに、そもそも意味なんて無い
生きることに、意味を見出だしたがるのは人間だけだ
動物たちは、過去を悔いることもなく
未來を憂うこともなく、
ただ、その一瞬一瞬を懸命にただ生きている
2度と訪れない、その一瞬を
そのひとつひとつに燃やした点の集まりがが、振り返ると線になり歩いてきた軌跡となる
その軌跡がそれぞれの命の意味を持たせることになるのかも知れない
だから、「生きる意味とは?」
ではなく
この一瞬が意味を持つかもしれない、と丁寧に命を実感することだ
フィロ