9/2/2025, 2:55:48 AM
【夏の忘れものを探しに】
海にも行った。川にも行った。
夏祭りにも行ったし、友達に会いに行って懐かしい顔ぶれにも会えた。
でも何か忘れてる気がするんだよなぁ。
なんだったかなぁ。
チリン。
ああ、そうか、お盆はもう終わったんだ。
帰らなくちゃいけないんだった──。
8/31/2025, 10:50:37 AM
【8月31日 午後五時】
俺は組んでいた足を下ろし、時計を眺めた。
グラスの氷がカラン、と音を立てた。
夏の終わりを認めたくない蝉たちが、やかましく外でパーティーを繰り広げている。
全く、いい気なもんだぜ。
俺に残された時間は少ない。
だが課された仕事はこなさなきゃならねぇ。
どこかで見たような修羅場を何度も超えてきて、今の俺がある。
なあに、こんなもの、修羅場のうちにも入らねぇ。
──さあ。勝負はこれからだ。
俺は鉛筆をにぎり、「夏休みドリル/さんすう」の1ページ目をめくった。
8/30/2025, 2:15:52 PM
「あー、やっぱりちょっとシャドウ濃いかな」
そんなことない、綺麗よ。
「今日は朝一で会議だから気合入れて行かなちゃ」
そうね、しっかりコーヒーでも飲んで目を覚ましてね。
「あっ、この事件、犯人捕まったんだ」
あらほんと、あなた、気にしてたものね。
「あは、いやだな、独り言が多くなっちゃって──やば。もうこんな時間。行ってきます!」
はい、いってらっしゃい。気をつけてね。
早く帰ってきて。
──待ってるから。
私は一人暮らしの彼女に、そう声をかけた。