【霜降る朝】
朝起きたら、一面が真っ白だった。
なんだこれは、凍りついているのか?
世界に砂糖がついたかのようで、なんだか美味しそう、と思ってしまうのは不謹慎だろうか。
大人たちは慌てている。。
朝からも、ニュースで大騒ぎになっている。
昔フリーザーが壊れた時も、母さんは慌てていたっけ。
なんて言ったっけ。確か「霜がついた」と。
あれと今、ここは同じになっている。
そうか、これが霜というやつか。
まるで、世界に真っ白なヴェールが降ってきたようだ…。
──今朝、コロニー内の環境維持プログラムに大きな損傷が認められました。理由は調査中です。コロニー内の気温プログラムの修復を試みていますが、現在効果的な対策は判明していません。気温が急速に低下しています。
生命維持に問題が生じる可能性があるため、コロニー公社は緊急避難マニュアルに従い、住民を順次避難させることに決定しました。住民の方は、ブロックごとの通達に従い、各位──……
【tiny love】
ふっくらとしたにぎりこぶしが差し出された。
両手を下に差し出すと、そっと拳が広げられた。
落ちてきたのは、小さなシロツメクサの指輪。
「くれるの?」
黄色い園の指定帽子が、小さく頷いた。
「だいじに、してね」
はにかみながら、男の子は小さな声でそう言った。
【終わらない問い】
誰にも触れられない。誰も私の顔を知らない。
だってここはバーチャルな世界だから。
「yuk1! こっちこっち!」
私のことを呼ぶ友の声。
今日の配信見た? あのポストすごいよね?
他愛のない話題が私の心を満たしていく。
大人たちは言う。それはバーチャルなものだから、満たされる気がするだけだと。
誰にも触れられない。誰も私の顔を知らない。
だってここは学校だから。
「ユキ? 誰それ?」
私の名を呼ぶ人はなく、気に留める人はない。
悪意のないクラスメイトが、私の心を押しつぶしていく。
私は問う。バーチャルなものにしか満たされない私を、一体誰が満たしてくれるのかと。
そこに居る私を、誰が否定できるのかと。
【揺れる羽根】
羽根の形のピアスが君のお気に入りだった。
恋人とのデートの話を楽しそうにする君。
私は、その揺れる羽根になりたかった。
【旅は続く】
君がいなくなっても、
私がいなくなっても、
二人ともいなくなっても、
旅は続く。
道がそこにある限り。