【言葉はいらない、ただ…】
【突然の君の訪問。】
高校の同窓会に向った彼女。普段は会えない同級生と久しぶりに会えると、数日前からウキウキしていた。
『行ってくるね』とLINEがあり、『うん、気をつけてね』と返信する。元彼とかいるのだろうか。少しだけ心が沈んだ気がした。
同窓会のあとも友達と飲みに行ったりするのかな。
久しぶりに1人で過ごす、静かな時間。いつもお互いがオフの時は家に来て、ゆっくり過ごすことが多い。「暇だ…」
ピンポーン
ウトウトし始めた頃にインターホンがなった。時計をみると、まだ12時は回ってなかった。
扉を開けると、いつもよりおしゃれして、すこしメイクが濃いめな彼女。家の中に招き、リビングのソファに座ると、くっつくように彼女も座った。ただ、顔は下に向け、表情が見えない。
「…急にごめんね」
「大丈夫だよ。帰ってくるの早かったね。2次会とかなかったの?」
「…」
なにも話さず下を向いたままの彼女。何かあったのだろうか。とりあえず、彼女の肩を抱き寄せると、甘えるかのように寄りかかってきた。
「…友達がね、結婚するんだって。私以外、みんな結婚してた。それ聞いて、なんか焦っちゃって…いてもたってもいられなくて…会いたくなっちゃったから急に来ちゃった。…ごめんなさい」
彼女に不安にさせてたのか。
「こっちこそごめん。会いに来てくれて嬉しかった。ありがとう。」
【雨に佇む】
会社から出たら大雨だった。早く帰れると思ったのに。鞄を探るも、いつも入ってるはずの折りたたみ傘が入っていなかった。
そのまましばらく雨宿りをしていたが、全く止みそうもない。普段ならまだ明るい空は真っ暗。
遠くのほうで雷が鳴り始めた。自宅の方も雷が鳴っているのだろうか。最近、同棲を始めたばかりの彼女は雷が苦手だと言っていた。今日は仕事がオフで家で待っているはず。
早く帰らないと。
【私の日記帳】
新年が始まる。気に入ったノートを買って、早速、新年の抱負を書く。
新年度が始まる。可愛らしいノートを見つけ、新年度の抱負を書く。
そんなことを繰り返す、私の日記帳は、いつも3ページしか埋まらない。
そして、また、環境が変わり、日記を書いてみようと決意する。シンプルなノート。あまり書き込まなくていいように、書くスペースが少なめのノートにした。
数ヶ月後。日記帳にはホコリが溜まっていた。
【向かい合わせ】
席替えなんて、学生にとっては一大イベント。それもクラスに好きな人がいるなら尚更。
席を移動する先には、好きな人がいた。
「よろしく」
前の席は、好きな人よりも後ろだったから、黒板よりも後ろ姿を眺めてた。席が隣になると、近すぎて、見れない。ドキドキする。心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいに。
席替えが終わり、授業が始まる。グループ学習をするらしい。隣の机と向かい合わせになる。前を見ると、好きな人の顔が見える。つい数分前まで、後ろ姿しか見えなかったのに。
好きな人の顔が見えるということは、私の顔も相手に見える。そんな当たり前の事実に更にドキドキ。
どうか赤くなった顔があなたに気づかれませんように。