【1件のLINE】
AM1:00過ぎ。
もう寝ようと、ベッドの上でスマホを見ながらゴロゴロしていた。
ピロンと音がなり、メッセージが表示された。
『お仕事お疲れさま。おやすみなさい。』
恋人からのLINE。仕事が忙しくて、会う時間をつくれていない。
毎日届くLINE。いつも愛にあふれているが、今日はなんか疲れてる?
すぐに「なにかあった?」とLINEを送る。するとすぐに既読がついた。
『会いたい』
とりあえず既読だけつけて、財布とスマホと車の鍵をもって、急いで家を出た。
【目が覚めると】
暗闇の中、必死に走る。
何かに追われてるような気がして。
でも後ろを振り向く勇気もない。
必死に走って走って。
目が覚めた。夢だったんだ。汗をかいてる。
夢の中で走ってたはずなのに息が切れてる気がした。
体が強張っていたのか、全身が痛い。
何に追われてるのかはわからなかった。ただただ必死だった。どれだけ走ったかわからないし、周りが真っ暗闇だったので本当に走ってたかもわからない。
スマホを見ると、AM3:25。もう一度寝ないと、明日…いや、今日の仕事に響く。
眠れる気はしなかったけど、もう一度、目を閉じた。
気がつくとAM5:17。アラームがなるのはもう少し先だが、二度寝をする余裕はない。
夜中に悪い夢を見て目が覚めたけど、何の夢を見てたっけ。
【私の当たり前】
朝起きたら、ご飯が準備されている。炊きたてのご飯。温かい味噌汁。
キッチンにいるあなたに『おはよう』といったら『おはよう』と挨拶が返ってくる。
『いってきます』といったら『いってらっしゃい』と返ってくる。
『ただいま』って言ったら『おかえりなさい』と返事がある。
帰ってきたら、夜ご飯が準備されていて、お風呂に入ろうとしたら、すでにお風呂が沸いている。
そしてなにより。
あなたが側にいてくれること。
『ただいま』
今日は返事はこない。ご飯もないからコンビニへ弁当を買いにいった。話しかけても無音。
あなたの声が聞こえることは、私にとって当たり前だった。
出張でいないだけなのに、寂しさを感じてしまう。
朝目が覚めたら、あなたの寝顔が目の前にあるのかな。すこし掠れた寝起きの声で『おはよう』って返してくれるのかな。
私の当たり前は、すべてあなたがいるから成り立っていた。側にいてくれてありがとう。
【街の明かり】
今日も疲れた…
残業していて終電を逃し、とりあえずタクシーが捕まりそうな道まで歩いてく。
こんな時間なのにも関わらず、街は明るい。
これが眠らない街か。
田舎から出てきてまだ1年もたっていない。まだまだ仕事ができないため、最近は残業ばかり。でも終電までには帰れてたんだけど。
田舎だと外灯がポツポツとあるだけで、人が歩いていることはありえない。
2~3年後には、田舎に帰ったときに、『都会に染まっちゃって』なんて言われるんだろうか。
【七夕】
スーパーで見つけた大きな笹に色とりどりの短冊。
「将来〇〇になりたい」とかそういうのばかり。
小さい頃はこんな楽しかったな。
大人になってやらなくなったけど。
…でもいまもし願うなら何を書くんだろうか。
「なにしてんの?」
ふと後ろから聞き覚えのある声がした。振り向くと、私の大好きな人。
「七夕?なんか願い書いたの?」
「まだだけど、」
そんな会話をしながら、彼は短冊へと手を伸ばす。
「なんかこういうのドキドキするよな。一緒に書こうぜ。何色がいい?」
私は赤色の短冊を手にした。迷った末、
『大好きな人に想いが届きますように』と書いた。
そして彼に見られないように、そっと笹の葉に吊るした。
「できた。…ってもう書いたの?俺も飾ろうかな」
彼が青い短冊を吊るした。そして満足そうに笑った。
「よしっ。…なんて書いたの?」
「言わないよ。なんか言わないほうが叶いそうじゃない?」
「そういうもんなの?まあいいけど。…俺の願いごと気になる?」
彼は飾った短冊を掴み、見せるようにこちらへ願いごとを向けた。
『いま隣にいる君と来年も再来年も隣にいられますように』
「この願いごと、叶えてくれませんか?」
「…私でいいの?」
「うん。君じゃなきゃイヤだ。」
「…私で良ければ喜んで。」
私の願いごとが叶った瞬間だった。
年に1度だけじゃなく、これからずっと側にいられますように。