a-z

Open App
7/1/2023, 3:06:32 PM

【窓越しに見えるのは】

外を見ると今にも降り出しそうな曇り空。
グラウンドでは、私が憧れている先輩のクラスが体育の授業を行っていた。
視力は良くないが先輩のことはすぐに見つけられた。
楽しそうな表情で体育に参加する先輩。
いつも笑顔でいるのをみて、私は憧れるようになっていった。

私の教室では自習の時間。授業の間、私は何度も外を走る先輩を見つけ、ぼーっとしてしまった。

授業が終わり、帰るために教科書や筆記用具を片付け、鞄をもって廊下に出た。

『あっ!君、さっき見てたよね』

ふいに声をかけてきたのは、あの憧れの先輩だった。
見てたこと気づかれてた…!私は焦りからか、返事ができず、目を逸らしてしまった。

『急にごめんね、話しかけて。なんか見られてるなーって気になって。でも急すぎたよね、ごめん』

そういうと先輩は私の頭を撫でた。突然の出来事に体が熱くなる。

『顔赤くなった笑。今日は天気が悪いね。…明日は晴れますか?』

「えっ!明日ですか?えっと…調べてみます。」
私はスマホを取り出し、天気予報を調べる。

『あのさ、【明日は晴れますか?】って調べて見て?』

私は疑問に思いながらも、【明日は晴れますか? 意味】と検査した。
検索結果をみて、私は顔が赤くなるのを感じた。

『…意味わかったかな?なら、返事がほしいんだけど』

「あの…【明日は晴れて、月が綺麗でしょう】」

6/30/2023, 2:20:30 PM

【赤い糸】

ふと、左手の小指に赤い毛糸が結ばれているのに気づく。

『これってもしかして…赤い糸ってやつ?!』

そうだとすると、この赤い糸の先が気になった。
恋人がいない歴=年齢。やっと青春がきたかも。

赤い糸の先を辿る。外に繋がっているようだった。
運命の相手に繋がっているとすれば…考えた末、めいいっぱいのお洒落をして家を出た。

赤い糸を辿って歩く。お洒落をしたからなのか、運命の相手と会えるからか、いつも歩いているはずの道がキラキラしてみえた。気持ちが弾む。

結構な距離を歩いてきた。まだ赤い糸の先は見えない。周囲を見てみると、お洒落なお店が並んでいた。
少し疲れたし、休憩しようと目の前にあるカフェに入った。ぼーっとスマホを見ながら、普段は頼まないコーヒーを待つ。

「おまたせしました。」

運ばれてきたコーヒーに砂糖とミルクを入れた。今日のこの後の予定を考えてみる。店内を見渡すと、コーヒーを運んできたすごくお洒落な店員さんと目が合う。店員さんは微笑みかけてくれたが、すぐに目を逸らしてしまった。少ししてあの店員さんを盗み見ると、小指に赤い糸が結ばれてることに気づく。

『あの人の運命の相手は誰だろう』

何故だか少しショックをうける。あの赤い糸が自分の小指に繋がっているとよかったのに。甘いコーヒーを飲みながら、そんなことを思った。

6/29/2023, 1:52:50 PM

【入道雲】

仕事が早く終わった。まだ空が明るい時間。
ふと空を見上げると、そこには夏の空が広がっていた。

青い空に入道雲。道路がもやもやと揺れて見える。遠くからはセミの声。
そして、頭の中で流れるのは『Mrs. GREEN APPLE』の『青と夏』


『夏が始まった合図がした』

6/28/2023, 1:55:29 PM

【夏】

玄関のドアを開けると熱気を感じ、すぐに部屋に戻りたくなった。
家から駅まで歩いている間に溶けてしまわないだろうか。数歩歩いただけで背中を汗が伝っていった。

スーツのジャケットを手に持って歩いている会社員。こんな暑い中、ジャケットなんていらないんじゃないか。スーツを正しく着て当たり前、なんて上司に言われたりしてるのだろうか。

駅までの間に小さな公園があった。公園の木々から聞こえるセミの声が夏の始まりを告げた。

6/27/2023, 1:43:35 PM

【ここではないどこか】

目を開けると真っ白な世界が広がっていた。
360°真っ白。

ここはどこ?

さっきまで会社にいて、そして上司に理不尽な理由で怒鳴られていた。怒鳴られる理由がわからず、でも怒鳴られていることが精神的にもしんどくなり、説教が終わるなり、会社の屋上へ向かった。外の空気が吸いたかった。

久しぶりに見上げた空はどんよりと曇っていて、気分転換にきたはずが、さらに心が重くなった気がした。

連日の説教。上司は誰でもいいから自分のイライラをぶつけたかったのだろう。数日前、その標的になった。なにも言い返さない私は、不満をぶつけるためのいい道具だったのだろう。最初は「自分とは関係ない話」と聞き流していたが、やはり連日となると精神的にきつかった。

空を見上げると鳥が飛んでいた。ふと、自由に飛び回れる鳥がうらやましくなった。
現実から逃げたかったのだろう。届かないとわかっているのに手を伸ばす。

どこでもいいから、どこかへ連れて行ってくれ

その瞬間、身体が傾いた。謎の浮遊感。そのまま落ちていく。

そして目が覚めると広がっていたのは真っ白な世界だった。

Next