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【赤い糸】

ふと、左手の小指に赤い毛糸が結ばれているのに気づく。

『これってもしかして…赤い糸ってやつ?!』

そうだとすると、この赤い糸の先が気になった。
恋人がいない歴=年齢。やっと青春がきたかも。

赤い糸の先を辿る。外に繋がっているようだった。
運命の相手に繋がっているとすれば…考えた末、めいいっぱいのお洒落をして家を出た。

赤い糸を辿って歩く。お洒落をしたからなのか、運命の相手と会えるからか、いつも歩いているはずの道がキラキラしてみえた。気持ちが弾む。

結構な距離を歩いてきた。まだ赤い糸の先は見えない。周囲を見てみると、お洒落なお店が並んでいた。
少し疲れたし、休憩しようと目の前にあるカフェに入った。ぼーっとスマホを見ながら、普段は頼まないコーヒーを待つ。

「おまたせしました。」

運ばれてきたコーヒーに砂糖とミルクを入れた。今日のこの後の予定を考えてみる。店内を見渡すと、コーヒーを運んできたすごくお洒落な店員さんと目が合う。店員さんは微笑みかけてくれたが、すぐに目を逸らしてしまった。少ししてあの店員さんを盗み見ると、小指に赤い糸が結ばれてることに気づく。

『あの人の運命の相手は誰だろう』

何故だか少しショックをうける。あの赤い糸が自分の小指に繋がっているとよかったのに。甘いコーヒーを飲みながら、そんなことを思った。

6/30/2023, 2:20:30 PM