こーさん

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7/3/2024, 3:26:17 AM

【日差し】
 
初めて空腹を感じた。

生まれたときから食べ物に困った事が無かった。

だが、ここ2日間、食料探索組が帰ってこない。

空腹に耐えかねた増築工事課の私は
総監督に相談し食料探索への許可を貰い
数ヶ月ぶりの地上へ出た。

あぁ。いい天気だ。
普段暗闇で暮らす私には眩し過ぎるほどの日差しだった。身体の芯の奥底から力が湧き出る様な感覚だった。



一瞬、日差しが遮られ、
急に、痛くて、重くて、潰れていく。
もう死ぬのが分かった。
圧倒的な、殺意と、重力。
遠のく意識の中
ありんこ!ありんこ!
謎の叫び声が聞こえた。

残り数秒の命で、なぜ死ななければいけないか、考えてみよう。

6/30/2024, 7:02:10 AM

【入道雲】

青や黄や緑の夏に

個々の道をゆく2人は

入道雲と青空の境目の様に

色のない別れを惜しんでいた

6/22/2024, 1:55:35 PM

【日常】

私の日常を知る全ての人の眼球が
私を嫌悪し、背き、見なかった事にしてる。

そんな世界だと仮定した場合、
ただ二つだけ、誇らしげに見開き目を離さずにいてくれるその眼球が、
母の眼球だとしたら
私の人生は成功と言えるのだろう。

6/21/2024, 5:55:57 AM

【あなたがいたから】

飲みすぎた

あなたがいたから

明らかな下心と

微かな期待

スルスルと
意思が有り、動く糸の様に
あなたは遠ざかる

嫌われた訳ではないと
自身をなだめるように
一人酒を浴び涙した

6/19/2024, 5:00:22 AM

【落下】

信じ難い事に、
私は上空にて誕生した。
その後はただ落下していくのみ。
身体の向きを変えながら。

落下する事や地面が近づく事に恐怖は無かった。
それで死ぬ事は無いと本能的理解があったからだ。

着地後、仲間が次々降ってくる。
隣に着地した彼とは仲良くなれそうだ。
私の頭上に着地した女の子は、真四角だった。

仲間達でこの世界の隅から隅まで埋まった時
私の半分が消え、隣の彼も半分消えた。
間もなくして私は、おそらく隣の彼もだろう
その全てを失った。

何故私達は生まれ、消えたのか。
理解する前に生涯を終えた。

異世界からこちらを眺め
どうやら意図的に私達を消した生物は
この無慈悲な世界を
テトリスと呼んだ。

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