お題『未来への船』
あぁ、こんばんは。いや、こんにちは、でしょうか?
お代は頂いております、どうぞお乗り下さい。
どこへ行くか?さあ。私も分かりません。でも行かなければならないんです。
お題『静かなる森へ』
森へ行こう。
言葉の葉が、草が、生い茂るあの森へ。
酷く静かで、誰からも目を離され、口を噤んで、やっとそこに在ることを許される。
誰かのタイムマシンへ乗りに。
誰かの生きた証を、確かめに。
お題『夢を描け』
それをすることはとても、大変なことだ。
想像は簡単だ。
しかし、その夢を描くのにはなんの紙の質がいいのか。どんな描き方がいいのか。それは自分に合った描き方なのか。なんの色が必要なのか。
…考えるだけで頭痛がしそうだ。
思うように描くことは難しい。
そこまで苦心しながら叶える夢は、きっと素晴らしいものとなる。
お題『届かない……』
あなたにとどかない。
私の憧れのあなた。
貴方のようになりたくて、背伸びをした。あなたと似た服を買って、似た香水を付けてみたり、少し頑張って見た。
けど、あなたのようにはなれなくて
結局、私は私だった。
お題『木漏れ日』
自分の胸が上下する感覚がした。ゆっくり、呼吸をする。さわさわと風に揺れる木の葉の音がして、そんな隙間からちらちらと木漏れ日が僕の瞼を照らした。
「ルゥ、なにしてるの?」
聞き覚えのある声が僕の耳へ届く。いつも彼女が僕へ話しかける定型文だ。
「…なんだと嬉しいわけ?」
「日焼けとか?」
「なんでそうなるの。」
はあ、とため息を着く。起き上がると、リリが「ふふ」と笑った。
「なんで嬉しそう?」
「私が来ると起き上がったり立ち上がるから。」
「だって絶対、僕のことどっか連れてくじゃん…。」
昨日は池の周りを散歩しようと言って、おおよそ、時計の長針が1から4に移った頃に歩き終わるのに、6を指すまで歩き続けた。どれだけのんびりさんなんだ。
この前はケーキを焼きたいと言い始め、付き合ってやった。そこまでは良かったのに、デコレーションのつまみ食いばかりして、殆どケーキを作りあげたのは僕。
結局、リリのお腹がとても膨れただけだった。
まるで雨の中で待ちぼうけを食らった様な気分になった。
「僕は今木の葉と会話してたの。」
「なんて言ってた?」
「今日は風が強くなりそうよって。」
その言葉を聞いてから、リリがまた擽ったそうに微笑んだ。
「じゃあ、洗濯物飛ばされないようにしないとね。サーヤに言っておくわ。」
「ああ。」
赤茶けた彼女の髪の毛を、風が揺らした。一度僕へ微笑んでから、たた、と草を踏み分ける音が遠くなっていく。