「あ、入道雲やー」
「夏やなー」
「あれ見るとソフトクリーム食べたくなるんやー。地球規模のサブリミナル効果やー。ミニストップの陰謀かー。」
「いや、普通に暑いからやろ」
「とりあえずミニストップ行こ」
「ミニストップ行きたいだけやん」
「ほんで結局ハロハロ食べるーwww」
「入道雲のサブリミナル効果、弱っwww」
ここではないどこかへ連れていって!
泣きながら彼女はボクに言った。
でも、そういうわけにはいかないんだよ。
どうして!連れていってよ!ねぇ!
だって、君が飲みすぎて粗そうしたから、トイレにいるんじゃないか。
もうちょっと酔いが覚めたら、ここではないどこかへ行こうね。
暑い日だったかな、いや寒かった?
雨は…降って…なかったような?
そのちょっと前にどこか行ったよね……
えっと、
水族館とか行ったんだっけ?
もう覚えてない…
君と最後に会ったのは
何年前だったかも。
ボクはすっかりおじいちゃんになってしまった。
ずいぶん前に君は先に天国に行ってしまったね。
いろんなことを忘れてしまったけれど、
お見合いをしたとき、君が恥ずかしそうに笑ったときの、笑顔だけはずっと覚えているよ。
さぁ、ぼんやりとしてきた。
いよいよだ。
泣かないで、息子たちよ。
ボクはおばあちゃんにまた会えるのが、とても嬉しいんだ。
さようなら。
今から行くよ。
「君と最後に会った日」
花ちゃんはHSPだった。
友だちにやってみなよと言われてやってみたネットのHSP診断。
「非常に強いHSPの可能性があります」
花ちゃんは驚いた。
驚くと同時に、今までの人生の全てがこれで説明できてしまうことに喜んだ。
喜んだ後に、こわくなった。
私はこれからの人生、全てをHSPのせいにしてしまわないだろうかと。
花ちゃん、大丈夫、大丈夫だよ、茫然としていた花ちゃんの耳に、友だちの声が聞こえた。
「繊細な花」
ボクは走った。
誰かが呼び止めた。
無視してボクは走り続けた。
走って走って、とにかく走った。
その1年後。
ついにたどり着いた。
日本の裏側。
正確には沖縄の裏側。
パト・ブランコ。