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《カーテン》
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《涙の理由》
ある秋の晴れた日。
僕は、彼女とコスモス畑を見に来ていた。
澄み渡る青い空とグラデーションを描く白い薄雲の下、赤、白、桃、黄と色鮮やかなコスモス達が風を受けて揺らめいている。
彼女は僕に背を向け、少し離れた場所でコスモスに囲まれている。
闇に魅入られた者の証である銀を帯びた白髮が、たくさんのコスモスの色の中で靡いている。
ここに来るまでは非常に嬉しそうにしていた彼女だが、コスモスを眺めているうちに物静かになった。
彼女は普段は明るく笑っているが、ふとした時に今のようになる。
僕が少しでも気落ちをしていると、即座にそれを見抜いて笑顔で励ましてくれる。
そんな貴女が時折見せる、一瞬の陰り。
憂いや悩みが原因でなければいいのだが。
そう思いつつ、空を見上げる。
太陽の輝きは、秋と言えども昼間はまだ強い。
その眩しさに一瞬目を眩ませて、僕はコスモス畑に目を戻した。
視界にに広がるのは、一面のコスモス。
真ん中に立っていたはずの彼女の姿は、そこにはなかった。
消え…た?
僕は喪失感に囚われて、彼女のいた場所へ慌てて向かった。
この感じは、あの時と同じ。
かつて旅の仲間の心に住む人が自分の世界へ帰った一年後、自分の気持ちに気が付いた時。
その人には二度と会えないと、本当の意味で気付いてしまった時。
なるべくコスモスを傷めないように、掻き分けながらその場所へ向かう。
するとそこには、しゃがみ込んで空を見上げる彼女の姿があった。
探しに来た僕に驚いたのか、彼女の表情はきょとんとしている。
よかった。いた。
彼女は、ここにいてくれた。
僕は、心底安堵した。
自分の顔が緩むのも気にせず、僕はしゃがみ込んだ彼女へ手を差し出す。
この手を、笑顔で取ってくれる彼女。
だけど、立ち上がった彼女の顔が近付いた時に見えてしまった。
彼女の目尻に溜まった、涙を。
彼女は本当に嬉しそうに僕の手を取り、微笑んでいる。
今は、その理由を話す時ではないのだろう。
もしも、涙の理由を僕に語れなくても。
僕がその理由を晴らせるならば、それでいい。
青い空の中、優しい風に揺らぐコスモス達。
この花達のように、互いに語らなくとも共に寄り添える存在でありたい。
《ココロオドル》
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《束の間の休息》
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