《無垢》
それは本当に強い人だった。
闘いの腕だけじゃない。
曲がった事を正すなら、例え国が相手でも折れずに立ち向かう精神。
愛する者に銃を向けられても憎む事のない優しさ。
何も得る物が無くとも、世界を救う為に闘い続ける覚悟。
全てが強くて、眩しい人。
この人なら全てを信じられる。
私の思いには、一片の曇りも無い。
《終わりなき旅》
こちらへ笑顔で手を振る皆と離れ、戻って来た私。
近いと思っていた場所は、気付けば遥か彼方。
あの時、悲しみに沈んでいたあなた。
今は笑って暮らせていますか?
皆と楽しく話せていますか?
いつか遠い遠い未来でもいい。その姿が変わっていてもいい。あなたの笑顔を間近で見たい。
必ず、あなたを探し出す。
そのためなら幾千もの時代も世界も巡りましょう。
《「ごめんね」》
それは彼女の口癖だ。
テーブルに置かれた塩を手渡す時。
手が届かぬ場所の本を取った時。
涙が溢れた目へ当てるハンカチを手渡した時。
目眩でふらつくその身体を支えた時。
闇に魅入られた色を持つ彼女の「ごめんね」を聞くたびに、僕の心に風が吹く。
疑念の雲を少しずつ吹き払うかのように。
ぼやけた心の輪郭がはっきりと見えたなら、
本当の彼女を知る事が出来るのだろうか。
《半袖》
夕日に赤く照らされたスラッとしたあなたの背中。
続く肩から伸びる半分覗く二の腕から垣間見える、
今までの努力も苦しさも全て詰め込んだ逞しさ。
汗ばんだ頬も張り付く髪の毛も、燃える瞳も、
未来へ続く力を紡ぐ。
心が強い事は知っていたけれど、
またあなたの新しい強さが見れた。
その立派な腕の中に、
どうか悲しみよりもたくさんの大きな幸せが抱え込まれますように。
《天国と地獄》
あなたの隣に立つことができた。
でも、私はあなたに闇の者と疑いを掛けられた。
いざという時に手を下すことができる、私の場所はそんな位置。
あなたはいつも皆を導く責任と過去の重圧に潰されそうで、毎日追い詰められていて。
それでも、自分を殺めようとした家族を見捨てられないほど優しくて強いことも知っている。
疑われていてもいい。警戒されていてもいい。
あなたの心が折れないよう支えることができれば。
私に気を取られている間は日常の重圧から逃れられるのなら。
あなたの隣は、私にとって最高に幸せな場所だから。