忘れてました
2025ありがとうございました。
2026も良い年にしたいですね!
ある少女が着の身着のまま、手入れの行き届いた畑で座り込んでいる。道路を見下ろせる位置に座り込んでぼんやりと考え事を始めた。
怒鳴られた事が怖かった。ここで死ぬんじゃないかと思うほどに。怒らせた原因は自分にあるはずだが、全く理解できなかった。
人の話はろくに聞かず、最後には自分の話にシフトする人間の得体が知れない。
この人が望んでいる答えがわからない。
暗くなったら帰ろうと思っていた。
当たり前だ。家は家だもん。
家には赤ちゃんがいる。姉になるからしっかりしてと言われても、わからない。わからない、わからない、わからない。
仕方がないとはいえ、母も父も祖父も祖母も赤ちゃんに付きっきりだ。
居場所が無かった。
話を聞いてくれる存在は居ない。
だから、出て行けと言われた時は都合が良かった。
どこまで時間が経ったら探しに来るんだろうって。
困らせてごめんね、もう心配しないでね。
ってことだが、君たちの娘さんに傷一つもつけちゃあいないぜ?
出会い頭に神嫁にしてほしいと頼んできたからな!
それでだ。いつ頃か忘れたが、君らの爺が娘さんを俺のいる場所に連れてきてな。
ここいらじゃ力の強い神の名で通っているから、あの爺は孫を守って欲しかったんだろう。
まあ開口一番に求婚されるとは思いもしなかったが。
その後も何回か家出をした時に話し相手になった。頃合いを見て、人間の言う【神隠し】をした。何か質問があるか、ないよな?
は、娘を返せ?やらん、やらんぞ。絶対にだ。なぜ俺の奥さんのことを大事にしない奴らに手渡さないといけないんだ。
俺たちはいついかなる時もお互いを信じ、聞き、話をして、愛し合っている。
親のようであり、兄弟であり、親友のように成長を見守っていたのに、どうしてお前らに返さないといけない?
心の片隅にでも娘を慮る気持ちがあったらそんなことはないはずだからな!
奥さんに免じて多少は許してやろう。
いいか、これは俺からの餞別であり祝福だ。
【 】
はは。これで俺の望みは叶った。
あいつの一番星を盗んだ。
我が人生に一生の悔いなし!
変な夢を見た。
新しい履歴書の紙が増え続けるとか、ニキビの角栓を引っ張ったら定規くらいの長さになったとかの類ではない。もっと穏やかで、ここが現実だと勘違いしてしまうくらいには変な夢だった。
今までの夢とは違って人?が出てきたからかもしれない。遠くで自身と親しげに話している彼は知り合いじゃない。でも、名前を知っている。知っているし、名前を沢山呼んだ記憶がある。わかるはずなのにわからないことが嫌いだ。
2日目。夢の中にいたのは日本家屋のような場所だった。現在も残っている祖母の家だろうか。縁側に座っている自分たちのそばに池があることが何よりの証拠だと思う。
ここで明晰夢だと気付いた。初めての体験に興奮を隠しきれず叫ぶと、隣にいた人?がギョッとした目で見てきたからすぐに謝った。
3日目。さすがに慣れた。夢は夢でも食べ物を食べることが出来るらしい。が、休憩のためにと出された菓子に手をつけることが出来なかった。黄泉竈食を恐れていたし、何より、自分を見る目が異様でとてもじゃないが食べる気にならなかった。
4日目。今度は夜だった。またも縁側に腰掛けていた。
カチャ、と音がして隣を見ると、連日会っていた彼だった。音の発生源は彼が持ってきた徳利と御猪口らしい。おぼんにのせて来ればと言ったが、否、これでいい。との事。よく分からない人だ。
おもむろに差し出された御猪口を貰う。一切の濁りがない酒に映る月の綺麗なこと。まったくもって羨ましい。
酒を口にする。現実世界で起きられなくなったことがわかっていたからだ。会社では存在を無視される、近所で不審者が現れた、1日の起床時間が少ないことに気付いた時。
どれも一貫性は無いが、自身のお迎えに来ていることだけは理解してしまった。
そのお迎え役が彼だろう。
随分と遠回りなアプローチだ。
まあるく、やさあしく、ていねいに。
緩急をつけることで、目の前にいる子はたちまちかわいい姿になっていく。
仕上げにギュッと包み込んであげれば、蕩けた姿の出来上がり。
これを自分だけが知っているのはなんと贅沢だろうか。
皆は知らない。知るはずもない姿を見ることができるのは、いつだって興奮する。
....大福のことだよ?