#4「微熱」
あれ、こんなに熱かったっけ。
いつもより少し、熱い気がする。
僕の額に手を当てて、君はそう言うけれど
こんなに体が熱いのは
少しだけ、君のせいかもしれない。
お題:微熱
#3 短歌
日が香る 若草色の 丘の上
君と仰いだ 晴天の下
お題:太陽の下で
#2「ぬくもり」
ぬくぬく。
おひさまが窓からさしこんで、
おはよう。って言ったみたい。
ぱじゃまのままじゃねむいから
ちょっとおきがえしようかな。
ぬくぬく。
ほっとのここあを片手にね、
のんびりおうちでカフェきぶん。
おそとは昼でもまださむそう。
びゅーびゅー風がふいている。
ぬくぬく。
いつかだれかからもらった
このくりーむ色のせーたーは
なんだかとてもなつかしい
忘れかけたにおいがする。
ぬくぬく。
おふとんかぶって
きょうはおやすみ。
きょうはなんだか、あたたかい。
お題:セーター
#1「落火」
夏の夜を見ている。
そろそろ終わるこの夏を、少しでも、また思い出せるように。何もなかった、なんて記憶を残さないように。
波の音、防波堤の上。一人。澄んだ黒い夜に、ただ一つ、何か上がるのが見えた。自然のものとも、人工のものとも思えない。この闇に到底似つかないような何かが、一つ、遠く静かに上ってゆく。それを目で追う。温い風を感じる。
──その瞬間、それは大きな光に変わった。大きな、火の花に変わった。灰の雲を吹き飛ばして、辺の闇夜を照らして、星が見えなくなって、波の形が見えて、眩しい。
花の中心から、何本にも延びた光の線が、少しして曲線に変わって、次第に爛れてゆく。
綺麗な円から少し汚くなったそれは、一つ、大きな音を立てた。ああ、空気が止まる。
その美しさにどうも合わない、爆発、とでもいうような、鼓膜を破りそうな音。波の音を掻き消す音。それを煩いとさえ思う。
もう咲いたときとは大違いで、テキトーに、不格好に散ってゆく光の点が、一つ、また一つ、また、一つ、闇に淡く馴染んで消える。
静かになった夜に、雲とは違う、白く棚引くのが見えて、僕は溜息を吐く。
澄んだ黒い夜に、ただ一つ、何か落ちていく。
それがあの火の花の最期だと気づくのに、しばらく、躊躇ってしまった。
お題:落ちていく