#118「紙飛行機」
所詮はただの紙だけど、ただの紙でも、折り方次第で驚くほど遠くまで飛ばせる。そう教えてくれたのは、もう亡くなった兄だった。
慣れない手付きで、小学生以来の折り紙を折る。兄の記憶を頼りに、一つ一つ丁寧に折り目を付ける。
さぁ、できた。
窓の鍵を開けて、外の空気をいっぱいに浴びた。紙飛行機の翼を広げて、勢いよく前へと押し出す。
大空を舞った紙飛行機が、風を受けながら、前へ前へ進んでいく。落ちそうになっても、また風に乗って、強く進んでいく。
──もっと遠くまで飛んで、風を切って、空を透かして、もっと、もっと、遠くまで
お題:風に乗って
#117
切なさは 懐うばかりの 勿忘草
刹那に消えた 貴方のことを
お題:刹那
#116
「きっと生きる意味はあるよ」
「いつか幸せになれるよ」
じゃあその意味って一体何なんですか? “いつか”って一体いつなんですか? “きっと”なんて責任逃れの綺麗事も、なんかもううんざりなんだよ
なあ、俺はいつまで耐えればいいんだよ
お題:生きる意味
#115
鳴らず音 しづく落つ静かは 滝もどき
お題:雫
#114「何もいらない。」
僕には何もいらない。何もいらない。
この部屋にクローゼットはいらない。あっても返って部屋を狭くする。
この部屋に椅子はいらない。所詮はあればあるだけ邪魔な発明だ。
この部屋に時計はいらない。何にも縛られず自由に生きていたい。
この部屋に掃除機はいらない。人類の進化なんてもう見たくもない。
この部屋に冷蔵庫はいらない。食べる行為それ自体にもう飽きている。
この部屋にシンクはいらない。油に塗れた汚れはきっともう落ちない。
この部屋に本棚はいらない。お偉いさんの思想なんて知るだけ損だ。
この部屋にテレビはいらない。世間様のニュースだなんて心底どうでもいい。
この部屋に窓はいらない。もう少しでいいから風に吹かれていたい。
この部屋に壁はいらない。他人との境界なんて無いようなものだ。
この部屋に君はいらない。君は僕を何も分かっちゃいない。
この部屋に僕はいらない。それは僕が一番嫌いなものだ。僕が一番いらない。
お題:何もいらない