〚君と僕〛
人は僕がみえない。
そう気づいたのは、お花に触れれなくなった頃
からだ。
朝いちばんに、学校の庭のお花に水をあげていた。
そうすると専科の先生が、僕に声をかけずにただ
通り過ぎていく。
前までは、声をかけていてくれたのに。
お花に触れようとしたとき。
近くに置いてあるばけつに入っていた水が。
_ばっしゃーん_
と地面に飛び散った。
先生が慌てて、掃除道具をもってくる。
掃除道具が僕を突き刺す。
あしたもすてきな日になりますように。
〚夢へ!〛
将来の夢。
幼い頃は、何個もあったのに。
日々過ごしていくと夢は薄れていって。
今はもう覚えていない。
夢に向かって頑張ろうと励んでた。
でもいつの日か、その夢は遠くに置かれていた。
僕の手が届くはずのない場所に。
いつも、不安があった。
言葉に出せないほどの不安が僕のなかで
積み上げられていた。
作文に書こうと想っても、言葉にできなくて。
結局、学校に居残り。
いつも担任が僕を気にかけてくれる。
お花に話しかけるように。
あしたもすてきな日になりますように。
〚元気かな〛
あの人が、15年前空へ旅立った。
_わすれないで。_
最期に僕へ、のこしてくれた言葉。
忘れるわけないよ。
日々いつも、あの人のことを考えてる。
戻ってこないかなとかさ。
前にいたらいいのにとか。
お墓に喋りかけても、声は届かないのね。
僕の声も聴こえないのかもしれない。
いっしょにいようって。
青空の下で、約束したよね。
ミサンガをつけて夜まで沢山喋ったよ。
でもいつの日か、あの人はいなくなっていて。
僕も鏡に写されなくなった。
実家のリビングには、僕の数々の写真が
置かれるようになって、そのとなりには
だれのかわからないお骨が置いてある。
あしたもすてきな日になりますように。
〚遠い約束〛
"来世もいっしょにいよう。"
そう言われた、15年前。
今もその頃の、教室にいる僕。
忘れられない、かなしみ。
あの人が僕よりも、先にはやく旅立った秋。
未解決事件として世に知られた。
今でもそれが現実だと想えなくて、あの人が
いないのだと実感できないまま、あのときと
おなじように教室にいてしまう。
歳はとらないさ。
あのときの年齢と同じだもの。
あしたもすてきな日になりますように。
〚フラワー〛
雨が降る春の日。
黄色のお花からぽたぽたと、お水がおちる。
次々と道に水たまりができた。
それを長々と眺めてる。
例え車にひかれようとも、かなわない。
僕に声をかける人もいない。
僕がみえない。
ただ道を歩いて、鏡のある洗面所につく。
洗面所で顔を洗おうとしても、水はすくえない。
鏡をみつめてれば、身体も消えていた。
鏡にうつしだされない、僕。
リビングに置いてある骨のとなりには僕の写真が
置いてあって、そのとなりにはスカビオサの紫色の
お花がぽつんと置いてある。
春風が僕をくすぐる。
あしたもすてきな日になりますように。