彼らと離れてしまってから、1ヶ月が経とうとしていた。今日も彼らの元に戻る方法は見つからず、真っ暗になった部屋で椅子に腰掛けて大きなため息をつく。初めの頃は、彼らが隣にいない寂しさや不安で涙が溢れて眠れない夜が続いていたものだ。最近は、以前よりも大分落ち着いてきていて布団に入れば直ぐに寝られるようになった。まあ、連日の疲れというのもあるのだろうけど。
「…あは、こんな寂しい夜なんて、慣れくないんだけどな」
ひとりきりの部屋でぽつりと呟き、静かに瞼を閉じる。
ここに来て、多くの人たちと出会った。彼らがいなくてもなんとかできていたのはここで出会った友人たちのおかげでもある。友人たちは僕のことを気遣ってくれるし、何かあればその度に手助けしてくれる、とても優しい人たちばかり。ここ最近は、睡眠や食事の時間を削って一日中資料室に籠もって書物を読み漁っていた為、それが原因で体調を崩していた。そんな僕に、帰ることができなくたって俺たちと一緒にいればいいじゃないか、と言ってくれる人だっていた。友人たちといれば、彼らと会えない寂しさも紛らわすことができていた。
それでも僕は、一刻も早く彼らの元に帰りたい。幼い頃からの付き合いがある、家族と言ってもいいくらい大切な親友。彼らは突然いなくなってしまった僕のことを心配してくれているだろうか。僕のことを探してくれているだろうか。未だに何も分かっていないけど、僕はいつか必ず彼らの元に帰れると、彼らと再会できると信じている。それまでの辛抱だ。
今日はもう寝よう。このまま起きていたって明日に響くだけ。ゆっくりと立ち上がって寝室へと向かおうとした。すると突然視界がぼやけた。何事かと思えば、何かが頬を伝ってぽたりと床に落ちる。…涙、か。そう気付いた瞬間に、どんどん涙が溢れてくる。さっき色々考え込み過ぎてしまったせいかな。
…ああ、寂しいよ。君たちは今どこにいるの?いつになれば会えるの?これ以上僕をひとりにしないでよ。
今日はなかなか寝付けない夜になりそうだ。
私はいつこの心臓が止まってしまうかわからない。幼少の頃から未だに治療法が見つかっていない難病に罹っているから。今日の昼間だって発作が起きて、本当に痛くて辛くて苦しかった。人々が寝静まった今も「明日の朝目が覚めることはないかもしれない」という不安に駆られてなかなか眠れずにいる。
生を受けたものはいつか必ず死を迎える。それでも私は、死というものにどうしようもないくらいの恐怖を感じる。
「ねえ、少しの間だけでいいから手を繋いでてくれないかな。…お願い」
私が寝そべっているベッドの隣で、椅子に座って読書をしていた貴方に言った。貴方は一瞬驚いたような顔をして、それからすぐに何も言わずにそっと私の手を握ってくれた。優しくて温かい、大きな手。この温もりを感じられている間だけは生きている実感が持てる。いつの間にか、涙が零れ落ちる。
大丈夫、私はまだ生きている。