NoName

Open App

 私はいつこの心臓が止まってしまうかわからない。幼少の頃から未だに治療法が見つかっていない難病に罹っているから。今日の昼間だって発作が起きて、本当に痛くて辛くて苦しかった。人々が寝静まった今も「明日の朝目が覚めることはないかもしれない」という不安に駆られてなかなか眠れずにいる。
 生を受けたものはいつか必ず死を迎える。それでも私は、死というものにどうしようもないくらいの恐怖を感じる。

「ねえ、少しの間だけでいいから手を繋いでてくれないかな。…お願い」
 私が寝そべっているベッドの隣で、椅子に座って読書をしていた貴方に言った。貴方は一瞬驚いたような顔をして、それからすぐに何も言わずにそっと私の手を握ってくれた。優しくて温かい、大きな手。この温もりを感じられている間だけは生きている実感が持てる。いつの間にか、涙が零れ落ちる。
 大丈夫、私はまだ生きている。

12/9/2023, 12:37:40 PM